サーキュラーエコノミー・ジャパン設立記念カンファレンス 先行事例から学ぶ日本での可能性

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サーキュラーエコノミー」という言葉の意味をご存知だろうか?資源を使い捨てにせず、何度でも作り直してずっと使い続けるという仕組みの経済のことだ。最近は日本でも耳にする機会が徐々に増え、IDEAS FOR GOODでもテラサイクル社の「LOOP」やユニリーバの取り組みなどを紹介してきた。しかし、日本国内ではサーキュラーエコノミーの取り組みがまだそれほど進んでおらず、欧米諸国だけでなくアジア各国からも遅れを取っている状況だ。

そんな中、一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパンの設立記念カンファレンスが9月12日、東京御茶ノ水にて開催された。同団体は、先述の状況に危機感を持ち、日本でサーキュラーエコノミーの考えを浸透させることを目的に作られたものである。企業の関係者や個人などが多数参加し、会場は満員となった。サーキュラーエコノミーの概念や世界各国の動向とともに、日本政府としての戦略、5企業による先行事例の共有が行われたこのカンファレンスについてレポートする。

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貴重講演をする、一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン代表の中石和良氏。

一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン:国際的な協調の下で、日本にサーキュラーエコノミーを普及させ、世界に誇る日本型サーキュラーエコノミー(日本モデル)の創造とその移行を加速させることを目的に活動する団体。代表は中石和良氏。

設計段階から「使い続ける」ものづくりをするサーキュラーエコノミー

最初に、基調講演として、一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン代表の中石和良氏がサーキュラーエコノミーの概念や世界各国の動向を解説した。

中石氏はまず、従来の資本主義であるリニアエコノミー、その延長線上にあるリサイクリング・エコノミー、そしてサーキュラーエコノミーの違いを解説。そして、日本がこれまで最先端を走ってきたリサイクリングエコノミーは、サーキュラーエコノミーとはまったく別のものであることを指摘した。

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リニアエコノミー、リサイクリングエコノミー、サーキュラーエコノミーのそれぞれの仕組みを表した概念図。

3つのエコノミーは、それぞれ以下のようなものだ。

  • リニアエコノミー:資源を取って生産して使って捨てるという直線的な経済。
  • リサイクリングエコノミー:廃棄物は出すものの、可能な限りリサイクルするなどして効率よく使おうという経済。リニアエコノミーの延長線上にある。
  • サーキュラーエコノミー:廃棄物を出さず、一度取った資源を作る・使う・リサイクルするという循環で回し続ける経済。

「今までの世界はリサイクリングエコノミーであり、日本はその中では最先端でした。ところが、世界はサーキュラーエコノミーに移っています。サーキュラーエコノミーはリサイクリングエコノミーの延長線上にあると思われがちですが、延長線上では無理なんです。完全に考え方を変えていかなければなりません。」(中石氏)

サーキュラーエコノミーの原則は「廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う」「製品と原料を使い続ける」「自然のシステムを再生する」の3つ。この3原則を実現するための詳細の図が次だ。左右に2つの循環が広がっており、通称「バタフライダイアグラム」と呼ばれる。

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サーキュラーエコノミーの3原則を実現する方法を図で表したもので、バタフライダイアグラムと呼ばれる。

ここでのポイントは、技術的サイクルと生物的サイクルを分けて考える必要があるということだ。右側の「技術的サイクル」は石油や鉄鉱石などの枯渇性資源の循環、左側の「生物的サイクル」は植物・魚などの再生可能な資源の循環だ。そしてそれぞれのサイクルの中で、できるだけ内側の輪の中で循環させていくことが望ましい。

「技術的サイクルでは、まずは修理やメンテナンスをして長く使えるようにしていきます。それができなければリユース、再配分をしていく。それもできなくなったら部品に分解して、部品を洗浄して再度製品を作る。再度使うときに、できるだけ資源や労働力を使わない仕組みで回していきます。それもできなくなって初めて、原料に戻して、原料からもう一回製品を作り直す。これは最後の手段ということです。

一方、生物的サイクルにおいて、再生可能資源は永続的にリサイクルできません。使うたびにだんだん劣化していきます。そのため循環の仕方が異なり、最終的には土に戻す、またはバイオマスに変えるという発想になります。土に戻すことによって栄養になって、そこでまた新しい植物が生まれていきます。」(中石氏)

さらに、「2030年までで500兆円、2050年までで2700兆円」というサーキュラーエコノミーの経済価値(アクセンチュア調べ)とビジネスチャンスを指摘したうえで、世界中の国家、都市、企業が先陣を切ってリーダーシップを取ろうとしている動向を解説した。EU諸国、カナダ、オーストラリア、アメリカの州・都市、チリ、ブラジル、中国、台湾、インド、インドネシアなどでは政策としてサーキュラーエコノミーに全面的に取り組んでいるという。さらに各業界における大企業の動きについても、豊富な資料とともに解説した。

続いて、環境省 大臣官房 環境計画課の中島恵理氏が登壇。6月に政府が閣議決定した「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を解説し、「2050年までに温室効果ガスを80%削減」を実現するために実施する施策の一つとしての、「地域循環共生圏」について解説した。これはSDGsを地域の中で実現していくという考え方で、地域の特性に合わせ、地域資源をできるだけその地域の中で持続可能な形で最大限活用しながら、経済社会活動を進めていく。地域の魅力を高めることにもつなげようとするのがポイントだ。AIIoTなどのテクノロジーも活用する。環境省としては各取り組みを支援し事例を取りまとめるとともに、全国規模のプラットフォームを作り、企業や地域とのマッチングも行っていきたいと考えているとのことだ。

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環境省 大臣官房 環境計画課の中島恵理氏。

生産者も消費者も、「その先」まで想像力を働かせることが重要

続く第二部では、国内先行事例として、再生可能エネルギーのみんな電力、住宅・建物の株式会社アトリエデフ、寝具のイワタ、農業の野畑ファーム、フードサービスのゼットンが取り組みを紹介。そこで見えてきたのは、企業がサーキュラーエコノミーの考えに基づいた製品作りをするということだけでなく、消費者自身も意識を変えライフスタイルを変えていくことが重要であることだ。つまり、生産者も消費者も「その先」まで想像力を働かせ続けることが、サーキュラーエコノミーを実現するうえで欠かせないと言えそうだ。

顔の見えるライフスタイルの実現を目指す「みんな電力」

私たちの生活に欠かせない電気。その電気は、中東から運ばれてきた石油を燃やして、CO2を大量に排出して作られたものかもしれない。少し前までは、電気の使い過ぎは止めようとすることはできても、自分が使う電気を選ぶことはほとんどできなかった。しかし2016年に電力小売が自由化され、消費者が自分で使う電気を選ぶことができるようになった。みんな電力はそんな電力小売り業者の一つで、「顔の見えるでんき」を目指す珍しい会社だ。

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みんな電力のホームページTOPより。

2017年度時点で再生可能エネルギーの比率を66%にしており、2019年度の目標は75%、今後100%にしていくことを目指しているという。電気は全国の事業者が発電したものを使用しており、ホームページで発電所一覧を写真つきで掲載している。顔写真付きで自身の思いを掲載している事業者も多くいて、まさに「顔の見えるでんき」である。

企業では、SDGsの最初の取り組みとしてみんな電力に切り替えるところが増えてきており、こうしたカンファレンスの場で共感してもらえる機会も増えたという。一方で、いまだ課題となっているのは消費者の意識だ。

「いかに一般消費者を巻き込んでいくかということが課題です。すごくこだわりを持って作られたものと、そうでないものが、同じように並んでしまう中で、いかに価値を理解してもらって、対価を支払っていただくか。『顔の見えるライフスタイル』まで踏み込んでいくことで、消費者の意識を変えていきたいと考えています。顔の見えるライフスタイルを提案するソーシャルアップデートカンパニーを目指していきます」(みんな電力株式会社 代表取締役 大石英司氏)

すべての建築素材を使い続けることを目指す「アトリエデフ」

アトリエデフは、建築・家具・リノベーションを手掛ける会社だ。代表取締役の大井明弘氏が、現在主流となっている新建材に含まれる化学物質の問題、輸入木材に施されている大量の薬剤・防虫処理の問題、木材が使われなくなって荒れている日本の山の問題などを指摘したうえで、アトリエデフが大切にする「素材」、「エネルギー」、「暮らし」の3つの循環について紹介した。素材に関しては、今までは素材の出どころとして「自然素材を使う」ということを重視してきたが、これからは素材の行方を追っていくことを重視し、すべての素材を「使い続ける」ことを目指していくという。

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アトリエデフのプレゼンテーションは、プレゼン画像にも会社の温かさが溢れていた。

さらに、建築材料の現状はリサイクルエコノミーであるとし、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、「製品を再資源化するため、初期設計を変える」「製造時のエネルギーを再生可能エネルギーに」「暮らし、生き方を変え、消費者の意識を変える」の3つが重要であるとした。中でも一番大事なのは、消費者一人ひとりの意識を変えることだ。そのため、家をつくるだけでなく、暮らしの提案まで踏み込んで行っているという。

サーキュラーエコノミーの取り組みとしてすでに行っているのは、店舗向け木製家具リース事業「めぐリス」だ。店舗はこれまで、5~10年ごとにリノベーションをすることが多く、家具はその際にすべて廃棄するという使い捨てのスタイルが主流となっていた。そこでアトリエデフは、所有権を自社が持ち店舗にリースする仕組みを作ったという。資源が無駄にならず、理想的な仕組みである。

自社製品の再生だけでなく他社製品のアップサイクルも行う寝具会社「イワタ」

イワタは、良質な睡眠の提供と安全・安心な睡眠環境の提供とともに、商品のサステナビリティを重視している寝具会社だ。代表取締役の岩田有史氏によると、すべての商品を自宅で洗える設計にして製品寿命を延ばしているだけでなく、昨年からはマットレス・羽毛布団・敷きパッド等の仕立て直しも手掛けているという。しかも自社製品だけでなく、他社製品も受け付けているというから驚きだ。さらに水洗い・日干しができなかった古い羽毛布団を、最先端テクノロジーを使って「水洗い・日干しができる羽毛布団」に再生するアップグレードサービスにも取り組んでいる。

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イワタが取り組む寝具の再生、アップサイクリングの流れ。

さらに、サステナビリティを重視した商品として、天然素材を多く使用し再生ができる画期的なマットレス「LAWCALW」や、国産の竹を活用したベッド「KAGUYA KOKOCHI」も紹介された。

責任を持ってサーキュラーエコノミーの起点と終点を担う「野畑ファーム」

続いての野畑ファーム代表の山村英司氏は、サーキュラーエコノミーの起点と終点を担う農業の決意を明らかにした。

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合同会社野畑ファーム代表の山村英司氏。

農家は素材となるものを栽培する。その素材は製品となり使われる。使い果たされた製品は、肥料として農家に戻ってくる。その肥料を使って新たな素材を生産する。

農業がサーキュラーエコノミーで求められる役割は大きいが、一方で農家の人口は145万人と少なく、サーキュラーエコノミーなど新しい価値観へは消極的な姿勢であることが多いという。そこで野畑ファームは、農業の価値を「収量」のみで測るのではなく農地の資産価値を評価軸に加えることで、新たな軸で農業が評価されることで、「農業に任せろ!」と言える状況を作っていきたいと考えているという。

地域活性化に取り組むフードサービス「ゼットン」

東京・神奈川・名古屋を中心に、Aloha Tableをはじめとした飲食業を展開するゼットンは、「店づくりは人づくり、店づくりは街づくり」がコンセプト。代表取締役の鈴木伸典氏によると、もともとエリア開発事業にも力を入れており、現在は葛西臨海公園の開発にコラボの形で取り組んでいるという。もともと取り組んできたこのような取り組みをさらに進めていくため、4月に「サステナビリティ戦略」を発表した。SDGsとも絡め、「持続可能な低炭素・脱炭素社会実現への貢献」「持続可能な資源利用社会実現への貢献」「人権・労働に配慮した社会実現への貢献」「持続可能な社会を実現する地域づくりへの貢献」に取り組んでいくとしている。新しく何かを始めるというよりも、これまで行ってきた活動を整理し直し、取り組みをより深化させていくことを目指している。

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ゼットンのサステナビリティ戦略。ホームページで誰でも見ることができる。

5つの事例共有を終え、サーキュラーエコノミー・カンファレンスは幕を閉じた。

編集後記

日本では、他の国に比べサーキュラーエコノミーがまだあまり盛り上がっていないと言われるが、今回のカンファレンスは会場が満席になるほど大勢の参加者が集まっており、これからの発展を予感させられた。事例共有では、多様な業界においての取り組みが紹介されたため、サーキュラーエコノミー実現に向けてできることは業界を問わずあるということを実感した。

同時に、記事の中でも触れたように、企業側だけでなく消費者も含めて、すべての人が自分の行動の「その先」まで想像し続けることが、サーキュラーエコノミーの成功において欠かせない。消費者側もさらに意識を変えていくことが必要だろう。

今後、サーキュラーエコノミー・ジャパンの活動が広がり、今回事例が共有された企業のような考え方が浸透し、ますます取り組みが進化していくことを期待したい。

【参照サイト】一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン
【参照サイト】みんな電力
【参照サイト】アトリエデフ
【参照サイト】イワタ
【参照サイト】野畑ファーム
【参照サイト】ゼットン