火力発電所跡地を循環工業団地に。ナカダイが描く、日本のサーキュラーエコノミーの未来

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2022年7月、鹿児島県・薩摩川内市にある九州電力の旧火力発電所・川内発電所跡地をサーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に向けた資源循環の社会実装拠点として活用する「サーキュラーパーク九州」構想が公表された。

同構想は、高度な廃棄物のリサイクル・再生技術を活用したハイレベルな資源循環および産官学ネットワークを活かした中長期の研究開発・実証実験の協業・支援により、新しい循環型ビジネスを創出することを目指している。すでに花王やトヨタ自動車、日本ロレアル、パナソニックなどの大手企業も多数賛同しており、日本の脱炭素・サーキュラーエコノミーの未来を担う拠点として注目を集めている一大プロジェクトだ。

薩摩川内市、九州電力、鹿児島銀行、早稲田大学とともにこの構想の中心にいるのが、リサイクル率99%を誇る株式会社ナカダイと循環ビジネス構築等を手がける株式会社モノファクトリーをグループとする株式会社ナカダイホールディングス(以下、ナカダイ)だ。

「捨て方をデザインし、使い方を創造する」リマーケティングビジネスを営み、リサイクル率99%という技術力を武器に日本の循環ビジネスを牽引してきたナカダイは、サーキュラーエコノミーに関心がある読者の方であれば、ご存じの方も多いことだろう。

今回IDEAS FOR GOOD編集部では、同社の代表・中台澄之氏に、循環ビジネスのプロである同氏の目から見た日本のサーキュラーエコノミーの現状や課題、「サーキュラーパーク九州」構想が描く未来について詳しくお話を伺ってきた。

「できていること」ではなく「課題」を共有してほしい。

最近では日本においてもサーキュラーエコノミーと名のつく事業や取り組みが急速に増えてきていると感じるが、ここ数年の変化を中台氏はどのように見ているのだろうか。

中台澄之氏

中台澄之氏

「特にコロナで本当に加速したなと感じているのですが、やはり菅前首相のカーボンニュートラル宣言は大きかったと思います。コロナにより消費者の行動が変わるなかで企業も変わらなければいけないと言い始めたわけですが、その中に循環や脱炭素といった要素を入れないと生き残っていけないとバシッと線を引いたのが、菅前首相のアナウンスでした」

「そこから一気に世の中が動いている気はするのですが、中には“やるやる詐欺”のようなものも多いので、最近は企業に対しても『できている感を出すのはやめて、課題を共有してください』と言っています。私たちからすると、課題を明確に言ってもらえないと、ナカダイもですが、他の企業や大学、研究機関含め、それなら自分たちの技術やノウハウでこれができる、といったコラボレーションが生まれないのです」

企業の立場としては広報の視点でついつい自社の優れた取り組みだけを発信しようと考えがちだが、サーキュラーエコノミーを実現するためには、「できていること」ではなく「課題」の共有が重要となるのだ。

いま始めないと、2030年には間に合わない。

「できている感」を出すのではなく、「できていないこと」をしっかり共有してほしい。中台氏がそう考える背景には、すでに待ったなしの状況で現在も深刻化し続ける気候変動の問題がある。

「2030年までに46%削減という達成しなければいけない数字は明確に出ているわけですから、もう『やっています』『こういう活動しています』というレベルではなく、脱炭素や循環をビジネスフェーズまで上げていかなければいけません。また、循環の世界では、仮にいま商品を発売したとしても、それを消費者が使って回収するまでに5年かかれば、回収できるのは2028年になるわけです。となると、もう2030年まで2年間しか改善の機会はないですよね。そう考えると、今の時点でもすでに遅いわけです」

素材や製品が循環するサイクルを考慮に入れれば、2030年の脱炭素目標実現に向けて動き出すには現在ですら手遅れ状態になっている。いま動き出さない限り、2030年にはできている企業とそうでない企業との間で大きなギャップが生まれ、準備をしてこなかった企業は大きなダメージを受けることになる。これが、中台氏が現場で覚えている危機感だ。

モノファクトリー

さまざまな素材がディスプレイされる、モノファクトリーのオフィス

「サーキュラーパーク九州」は、本気でやる人たちだけの場所

脱炭素、サーキュラーエコノミーの実現に向けて残された時間は少ない。一方で、企業としてはいくら循環型のビジネスを実現したくても本当に信頼できるパートナーでない限り、自社の課題を包み隠さず共有し、解決に向けて協働することは難しい。薩摩川内市で始まった「サーキュラーパーク九州」構想は、この問題を解決する場所でもある。中台氏は、構想の価値をこう語る。

「やはり、課題を共有するためにも循環を本気でやる人たちだけのマーケットや集合体が必要です。企業が課題を広く一般に公開することは難しいので、サーキュラーパーク九州の中ではそれらがクローズドで公開されており、情報だけを取って逃げていくような動きを確実に防ぐ仕組みを作りたいなと。そうすることで、企業も安心して情報を出してくれます。そのためには、本気でやる人しか入れないというのが大事になってきます。結局最後は人と人とのつながりなので、信頼できる人同士がみんなで繋がれるかどうかにかかっているのです」

サーキュラーパーク九州構想では、参画企業を本気で循環に取り組みたい企業だけに限定することで安心して課題や自社の情報を共有できる場所を提供し、本気の企業だけでスピード感を持って社会実装を進めていくことを目指しているのだ。そのため、同構想では参画企業の数にはこだわらず、一社一社としっかり顔が見える関係を構築し、リスクも利益も共有することを大切にしているという。

画像:薩摩川内市「サーキュラーパーク九州」構想 川内(火力)発電所跡地利活用事業より引用

全国の火力発電所が、循環工業団地に変わる日

中台氏が「サーキュラーパーク九州」を通じて実現したいのは、そこに来れば循環とは何かが全て体感でき、学べるフィールドだ。ナカダイのリサイクル技術はもちろん、新しい循環型素材からできた製品と出会えるカフェやホテルなど、人々が我慢するのではなく、ポジティブに循環に取り組めるような実証実験ができるフィールドを作りたいという。また、脱炭素の流れの中で役目を終えることになった旧火力発電所をその舞台とするという計画にも、プロジェクトメンバーらの間で秘められた思いがある。

「広大な敷地で多くの雇用を生み出してきた発電所を倒すことで地元が疲弊してしまったり、多大なコストをかけて解体して更地にしたりするよりも、全国の火力発電所をリノベーションして全国の循環工業団地にしていくことができれば素晴らしいですよね」

「薩摩川内市は、市民からモノを回収するといったときの協力体制がものすごく整っています。それはなぜかというと、やはり市長も含めて市を挙げてサーキュラー都市として国内外にアピールし、そこに投資を呼んで成長していきたいという意思を明確に持っているからです」

「我々としては、もちろん火力発電所跡地の活用方法の雛形でもあるのですが、自治体がこうした役割を担うと循環のビジネスが成り立つという産官学連携の雛形もできるのではないかと思っています。それを他の市も真似することで、環境省の地域循環共生圏のように小さいエリアでもビジネスが回る仕組みができる可能性があるなと」

日本全国各地にある火力発電所が、地域の資源循環を担う循環工業団地へと生まれ変わり、地域の環境・社会・経済を支える地域循環共生圏のハブとなっていく。「サーキュラーパーク九州」構想の先にあるのは、そんな素敵な未来だ。

「私は九州電力が32万平米もの土地をこの構想のために使う検討を始めてくれたことがすごいと思っていて。電力会社は再生可能エネルギーの文脈は持っていても資源循環の文脈はほとんど持っていないわけですよね。そこにナカダイのような群馬の80人くらいの会社と一緒にサーキュラーエコノミーを実現する可能性を、しかも、自社の重要な資産を使うというリスクをとって探ってくれています。九州電力という名前もあり、薩摩川内市の協力もあって、さらに具体的な場所もある。ここでやります、と指し示せたからこそ、本気でやりたいという大手企業も来てくれました。だからこそ、100社、200社と呼ぶよりも、10社や20社でもよいから絶対にやりきるという企業だけで連携したいのです」

本気で循環経済の実現を目指す薩摩川内市。そのためにリスクをとった九州電力。その期待に応えようとするナカダイ。この三者の想いがあったからこそ、名だたる大企業らも参画を決めたのだろう。

サーキュラーパーク九州の将来的な整備イメージ。画像:薩摩川内市「サーキュラーパーク九州」構想 川内(火力)発電所跡地利活用事業 より引用

資源循環は脱炭素の一歩目。我慢ではなく無駄を削る。

サーキュラーパーク九州をはじめ、サーキュラーエコノミーへの移行を考える上で脱炭素という文脈は外せない。中台氏は、脱炭素とサーキュラーエコノミーの関係性についてはどのように考えているのだろうか。

「お客様には、『資源循環=脱炭素』だと明確に言っています。リユースしたい、長く使いたい、リサイクルしたいのはなぜかというと、結局はそれによって新しい資源を取り出さなくてすみ、そこに係るCO2が減らせるからです」

「最終的には人間と環境とが共存したいわけですが、このままでは温暖化で共存ができません。じゃあ人間が全員死ねばよいのかというとそうではない。もっと生きたいし、旅行にも行きたいわけです。すると、結局は削れるところを削る、自分たちでできることはしっかりやるしか方法はありません。それも、削るために我慢を強いるということではなく、まだまだ脇が甘くて出てしまっているCO2がたくさんあるので、これを削ろうと言っているのです。

入口を絞り切れないのであれば、そこは許容する代わりに、少なくとも日本に入ってきたものはできる限り国内で長く使い続けるという循環を作ることは脱炭素においてもとても理にかなっていると思います」

脱炭素の実現に向けて、化石燃料由来のエネルギーを再生可能エネルギーへと転換していくことは欠かせない。一方で、現実的に化石燃料から100%脱却することもすぐには難しい。それであれば、まず目の前からできることとして、ごみとして燃やす量を減らす、また、長く使うことで新たに使用する資源の量を減らすことに取り組めばよい。その意味で、資源循環はどの企業でも取り組める脱炭素の一歩目となる、というのが中台氏の考えだ。

中台澄之氏

資源の状態が可視化されれば、最適な選択肢も見えてくる

脱炭素の実現に向けた一歩目としての資源循環という考え方はとても分かりやすい一方で、企業にとっては循環型の素材選択から製品デザイン、ビジネスモデルにいたるまで、数多くある選択肢のうちどの手法を採用することがもっとも脱炭素や事業にとって合理的なのかを判断するのは難しいのが現状だ。そこでナカダイが模索しているのが、テクノロジーを活用して資源の状態を可視化するという方法だ。

「ナカダイでは、DXにより捨てられたモノの状態の可視化に取り組んでいます。例えば、パソコンなどもシールをべたべたと貼ってしまえばリサイクルしづらいですし、使い倒したパソコンはプラスチック樹脂が劣化しているかもしれません。結局大事なのは、資源として使える状態で回収できるのかという点なのです」

「お客様から回収した製品の劣化の状態が分かれば、これはマテリアルリサイクルが難しいのでサーマルリサイクルしかない、といった判断ができます。この製品は3年以上経過すると劣化が激しくなってマテリアルリサイクルできなくなるといった傾向が分かってくれば、もっと早く回収してメンテナンスしたほうがよいか、逆に使い倒してもらってサーマルリサイクルしたほうがよいか、という判断ができるようになるのです」

「だからこそ、いわゆる『修理する権利』も基本的にはよいのですが、やはり個人が修理することにはリスクがあるなと思います。車検もそうですが、プロが見ているからこそ中古の市場が整っているわけです。メンテナンスには善し悪しがあって、スマホでも自分で最後まで長く使い切ることを前提に修理をしてもらい、最後はリサイクルに回すという選択肢もあれば、必ず2年後には戻してもらいプロがちゃんとメンテナンスするスマホ版の車検のような選択肢もあり、もしかすると2年ずつ回収していったほうが結果として長く使える可能性もあるわけです」

「メーカーも含めて、自分たちの製品が3年後、5年後に各家庭でどの状態で使われているかを集合として見た人は恐らくいないと思うのですが、これができると、売り切りがよいのか、サブスクで所有権を渡さないほうがよいのか、経済だけではなく資源循環の目線からも最適な選択肢が見えてきます。単にリサイクルしやすい、解体しやすいといったレベルではなく、売り切りと2年に1回のメンテナンスとどちらがよいかが分かるような仕組みをここ10年ぐらいで作りたいなと考えています」

サーキュラーデザインにおいては「できる限り長く使う」という点が重視されがちだが、長く使うことを重視するあまりに製品の素材が劣化し、結果として循環の選択肢が減ってしまうリスクもある。1人だと10年しか使えないが、メンテナンスを挟みつつ5人が3年ずつ使えば15年使えるという選択肢がありうるということだ。こうした選択を正しく行ううえでは、捨てられたモノの状態をいかに可視化できるかが鍵を握る。だからこそ、捨てられたモノを日常的に扱うナカダイのようなリサイクラーとメーカーとの連携が必要になるのだ。

中台澄之氏

サーキュラーエコノミーへの移行コストは、誰がどう担う?

サーキュラーエコノミーへの移行について議論していると、必ずといっていいほど課題として挙げられるのはコストの問題だ。分別や回収、再生のコストなど、リニアエコノミーと比較してサーキュラーエコノミーが少なくとも短期的には経済的に競争力がない状態にあることが移行を阻む壁となっているという話だ。コストをめぐっては、企業努力やスケールメリットによりコストを下げる、製品に付加価値をつけることで消費者に負担してもらう、移行コストを投資家が長期的視点で支援する、政府が税制措置をとるなど様々な議論があるが、中台氏はこの点についてどのように考えているのだろうか。

「薩摩川内でも模索しているのですが、もしわれわれが分別や循環により燃やすごみの量を減らしていくことができれば、行政は焼却量を減らした分だけ他の自治体から焼却物を受け入れることが可能になるので、そこで収入が得られます。また、そのゴミ自体も分別を進めることで、薩摩川内市だけではなくその周辺のエリアの脱炭素にもつながるという、企業連携ならぬ自治体連携が進みます。それぞれの自治体で焼却場や分別施設の維持、管理を連携すれば、これまでのごみ処理費用を循環ビジネス事業化の費用に変えることができるのです」

「事業会社だけでは脱炭素は達成できなくて、最終的にそれを使ってもらう消費者が協力してくれないと無理ですよね。それでは消費者がモノを捨てた先はどこに行くのかと言えば、一般の焼却場なので、焼却場に手をつけるのが一番なのです」

まずは地域の中で資源循環を進めていくことで、ごみの焼却量を減らす。それにより自治体としてはコスト削減や他の自治体からのごみ受け入れによる収入が期待できるため、そのお金を原資に新たなサーキュラーエコノミーモデルへの投資を進めていく。自治体からの補助金でも消費者に負担してもらうでもなく、事業者が自らお金を生み出す仕組みを作り上げていくことが重要なのだ。

形を残したまま「多」から「一」に回収する仕組みをつくる

最終的に焼却に回っていくごみの量を減らし、循環を実現させるために、メーカーや小売、物流といった各ステークホルダーには何ができるだろうか。

「メーカーや小売に期待したいのは、とにかく回収することですね。回収なくして循環は実現できないので。また、回収にあたっては市民が持ってきてくれればよいのですが、それが難しい場合に大事になるのが、ロジスティクスです。物流企業は『一』から『多』へ撒いていくのにはとても長けていますが、『多』から『一』に持ってくるという仕組みは現状ごみ回収にしか存在していません。また、ごみのパッカー車も形状を維持せずに回収する仕組みしかないのです」

「もし形状を維持した状態で『多』から『一』への回収ができるのであれば、リユースも修理も可能になるので、埋め立てるまでの時間をどんどん長くすることができます。それでは、なぜそれができないのかと聞くと『ごみと新品は一緒に載せられない』と言われるのですが、ごみであれば断ればよいのです。資源になるレベルまでしっかりと洗って綺麗な状態になったものだけを回収すればよいと思います」

「捨てない」という選択肢を増やしたい。

脱炭素社会への移行が求められるなか、これまで社会を支えてきた火力発電所をリノベーションして循環工業団地に変えていくという「サーキュラーパーク九州」構想をはじめ、最適な循環の選択を実現すべく廃棄物の状態を可視化するなど、中台氏が持つビジョンは聞いているだけでワクワクするが、その先にある、中台氏が実現したい社会像とはどのようなものなのだろうか。最後に聞いてみた。

「よく『ごみがない社会』をつくりたいと話しています。生活をしている以上、不要なモノはどうしても出てしまうわけですが、不要なモノ=廃棄物ではなく、資源として循環する社会になって欲しいなと思っています。我慢して買うのをやめよう、使うのをやめよう、ではなく、買ってもよいし使ってもよいと思うのですが、それを自分がいらないと思ったときにごみにしないで欲しいなと」

「そのためには、捨てないという選択肢を増やすことが大事です。今は、いらなくなったら燃えるごみの日に捨てるという選択肢がマインドのほとんどを占めていると思うのですが、そうではない選択肢が増えることが、結局はごみがなくなる社会につながると思うのです。だから、47都道府県に道の駅のように『モノファクトリー』があるのもよいと思うし、全国の火力発電所がサーキュラーパークになっているというのもよいと思うし。僕が生きているうちにはできないかもしれないですが、スタートぐらいは切っておきたいですね」

中台澄之氏

編集後記

長年にわたり廃棄物の現場で企業や自治体の現状を見てきた中台氏からは、どのような質問をしても同氏なりの考えが明確に返ってくる。また、現場を見てきたからこそ覚えている現状に対する危機感も、言葉の端々からひしひしと伝わってきた。一方で、我慢を強いるのではなく、一人一人ができることをやるのが大事という前向きな姿勢にも強く共感した。

同氏が話すとおり、いま私たちがどのように動くかで、10年後の未来は大きく変わったものになるだろう。本気でサーキュラーパークの実現に関わるという方法もあれば、生活者として責任あるモノの手放し方をするという方法もある。いずれにせよ大事なのは、「いま」すぐに行動をはじめること。そう強く感じた取材だった。

【参照サイト】株式会社ナカダイ
【参照サイト】モノファクトリー
【参照サイト】「サーキュラーパーク九州」構想 川内(火力)発電所跡地利活用事業

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