サーキュラーエコノミーの発展に役立つ材料として、「鉄鋼スラグ」に光が当たる日が来るかもしれない。鉄鋼スラグとは、鉄製品を製造するときの副産物のことで、世界では年に1億3000万トン以上、日本では年に約2300万トン生産されている(鉄鋼スラグ協会の発表による)。
現在、鉄鋼スラグは砂や砂利に代わるコンクリートの骨材や、道路づくりの材料に使われているほか、ニュージーランドの一部では廃水処理のプロセスにも使われている。水からリン酸塩やマグネシウム、鉄、カルシウム、シリカ、アルミニウムなどの汚染物質を吸収できるためだ。しかし、時間の経過とともにその効果は失われていくため、使用済みの鉄鋼スラグは廃棄せざるを得なくなっていた。
そこで、豪ロイヤルメルボルン工科大学研究チームは、廃水処理のために使われた鉄鋼スラグを、より頑丈なコンクリートの骨材としてリサイクルできないかと考えた。発表された研究成果では、使用済みの鉄鋼スラグを使ったコンクリートは、砂利などの従来の天然骨材のみを使ったコンクリートよりも約17%、未使用の鉄鋼スラグを使ったコンクリートよりも8%強度が上がることが明らかになっている。
ロイヤルメルボルン大学講師で水工学の博士であるバイプロブ・プラマニック氏は、「これは、廃水処理に使われた鉄鋼スラグの建築資材における潜在的用途を探る初めての研究だ。まだ克服すべき技術的な課題はあるが、この研究が進むことによって、すべての原料と副産物の無駄のない循環、という最終目標に近づくことを願っている。」と述べている。
また、同大学の研究員で土木工学の博士であるラジェブ・ロイチャンド氏はこう語る。「この技術を大きく展開していくには、鉄鋼スラグの長期的な機械特性や耐久性の調査など、さらなる研究が必要だ。しかし製鋼・廃水処理・建設の三つの産業が連携していくことで、廃水処理からコンクリートの強化まで、鉄鋼スラグのメリットを最大限いかせる可能性を秘めている。」
廃棄物の循環につながる、ロイヤルメルボルン工科大学の研究。製鋼の副産物である鉄鋼スラグを廃水処理に使い、清潔な水と強固なコンクリートをつくる画期的な研究の今後が期待される。
【参照サイト】 Making stronger concrete with ‘sewage-enhanced’ steel slag
【参照サイト】鉄鋼スラグ協会
(※画像:ロイヤルメルボルン工科大学から引用)