廃工場のリノベーションで生態系を保護。台湾台中市の環境保護施策

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経済成長期に作られた大規模工場は劣化が進み、人々は新しい設備の整った工場へ移っていく。古びた工場は、その構造の劣化により解体するにも危険が伴い、結果として誰も手をつけられないまま放棄され、人々から忘れ去られる。台湾では、そうした忘れられた廃工場や古い校舎を再利用し、魅力的な場所へ新たに生まれ変わらせる活動が、官民協同で活発に行われている。それは、台湾が国をあげて環境保護運動に力を入れている証左だ。その一つの例として、台湾台中市の廃工場跡地をご紹介したい。

Image via 自由時報

台湾鉄道台中駅のすぐそばにある帝国製糖工場湖畔公園(中国語名:帝國糖廠)は、日本統治時代の1935年に建設された帝国製糖株式会社の台中営業所をリノベーションして作られた大規模公園兼文化施設だ。およそ6年の歳月をかけて再開発されたこの公園内には、商業施設や映画館、レストランなどのレジャー施設のほか、台中市の歴史が概観できる施設もある。さらに、公園内にあるハート型の水草が有名な美しい湖の景観も、魅力の一つだ。

Image via 中央社 CNA

星泉湖と名付けられたその湖は、公園の約半分を占める。20年前、同公園内に商業施設を作る計画があったが、台風被害により頓挫してしまった。星泉湖は、その計画によって掘り返された土地に、地下水が溜まってできた湖だ。その放棄された土地を市政府が買い上げ、今回の施設を作ることになった。ビルの建設過程で、ただの水たまりだと思われていた湖に豊かな生態系が根付いていることがわかった。市政府は、湖の環境整備の際に、できるだけ元々の環境に近い状態を残しながら、より自然な状態で生態系を保護することに努めた。水底修理に使用された素材には浸水性のある素材を使用しており、湖の水位は常に上下するようにデザインされている。その様がまるで湖が呼吸しているかのように見えることから「會呼吸的湖泊(呼吸する湖)」と名付けられている。湖の周囲には、市民がより自然に親しみ、環境問題への関心もより深められるように、歩道やベンチなども設置されている。

台湾は過去に日本やオランダなど、他国による侵略と支配によって、常にその存在を脅かされてきた。そうした負の歴史を残すため、伝統的な建築物を保存することに対して非常に熱心だ。今回リノベーションされた帝國糖廠営業所も、日本統治時代の建築様式がしっかりと残っていたこと、当時の台中の産業についての重要な資料であることで、2007年7月に歴史建築に登録されていた。だからこそ今回、新たな場所として生まれ変わることができた。台湾政府は、環境問題に対しても3年前からテイクアウト用のビニール袋の使用を有料化し、プラスティックストローの使用を制限するなど、環境を意識した政策を多数実施している。
こうした公共事業や建築事業の際、元からある生態系への配慮が欠けていることが多いとされる日本の公共事業。我々は隣国台湾の姿勢からは学ぶことがたくさんあるのではないだろうか。

【参照サイト】「帝國制糖廠台中營業所」活化再利用 變身時尚餐飲空間
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