2019年5月に学術雑誌サイエンスが、浮遊性の海藻である「サルガッサム」が大繁殖していることを発表した。2,000万トンを超えるサルガッサムが、西アフリカからメキシコ湾までの約8,850キロメートルに渡って帯状に広がっていたのだ。2020年4月にも、腐った海藻がメキシコやカリブ海などのビーチに押し寄せて悪臭を放ち、観光産業や漁業、海洋生態系に影響を与えている。
そこで今回、イギリスのエクセター大学とバース大学が共同で、カリブ海と中米のビーチから海藻を回収し、そこから有用な資源を作り出す方法を発表した。集められた大量の海藻が、バイオ燃料や肥料の生成に使われるのだ。
通常、海藻などの海洋バイオマスの処理には、海藻を真水で洗ったあとに乾燥させる方法が用いられる。しかしこの方法はコストがかかるということで、研究者らは次のプロセスを考案。酸性と塩基性の触媒を使用し、海藻から糖を取り出す。この糖はパーム油の代替品を生み出す酵母を養うのに使用する。そして、残りの海藻を水熱液化と呼ばれる処理方法で高温高圧にさらして、燃料や低コストの肥料に加工できるバイオオイルに変換する。
さらに、このプロセスではビーチで収集されたプラスチックも海藻と一緒に変換できる。このアイデアは、エクセター大学アレン教授の12歳の息子、ロージー君の一言によって生まれた。ロージー君らが海岸で研究のための海藻サンプルを収集し、サンプルからプラスチックゴミを一生懸命除去していたときにふと言った「お父さん、プラスチックも海藻と一緒に変換できないの?」という言葉から、プラスチック変換の研究も進められるようになったという。
当研究は、英国研究・イノベーション機構(UKRI)、英国政府によるGlobal Challenges Research Fund、独立行政機関Innovate UK、Newton Fund、およびアメリカのRoddenberry Foundationによって支援されている。
二つの大学の研究チームは、海藻ベースのバイオリファイナリー(バイオマスを原料に、燃料や樹脂などを製造する技術)を構築し、地域の課題解決と世界への展開を目指す意向を示している。海藻をバイオ燃料に変える研究は現在、周囲を海に囲まれた日本をはじめ多くの国で進められており、今後のさらなる研究開発が期待される。
【参照サイト】Solve invasive seaweed problem by turning it into biofuels and fertilisers
【参照サイト】The great Atlantic Sargassum belt
(※画像:University of Bathより引用)