新型コロナウイルスの拡大対策として、欧州の一部の都市では現在ロックダウンが実施されている。米カリフォルニア州は米国内でロックダウンの実施が最も早かった州のひとつであり、3月19日からすでに2か月以上続いていた。ロックダウンの経済的な影響はすでに議論されており、多くの事業が経営方針の転換を余儀なくされている。5月8日からは一部飲食店や小売店が再開しているが、まだ全面的な再開には程遠い。
そんな中、カリフォルニアに店舗を構えるベーカリー「Mr. Holmes Bakehouse」がパンの販売を停止して、パンの手作りキットのECビジネスに切り替えることでこの状況を乗り越えようとしている。
同社は、クロワッサンとマフィンを掛け合わせた「クロフィン」を始め、アメリカ発スイーツを生み出してきた。しかし、ロックダウン開始後の72時間の内に、卸売業者への販売が全て停止されたことで3.2億円以上の売り上げを失った。
店舗の営業停止が長期化する見込みが高く、パン作りの原材料も不足している中、オンラインに目を向けてみると、米国内での「パン 焼き方」の検索回数は直近で1,000倍以上に増加しているなど、自宅での楽しむニーズが高まっていたのである。世界中でもイーストや小麦粉が売り切れる事態になっている。
従業員の雇用とファンのニーズに応えることを目指して、同社はECでのキット販売に事業を大きく方針転換したのだ。
ユーザーは宅配でキットを受け取り、QRコードからビデオにアクセスして作り方を観ることができる。パン作りに必要な水以外の材料が含まれており、オーブンとボウルがあればパンを作れるセット内容だ。パン以外にも、クッキー、ベーグル、パスタなど、様々なレシピを作れるセットを販売している。
Mr. Holmes Bakehouseは同時にメールマガジンの配信も開始しており、今後新しいレシピを発信予定など情報発信も継続的に行う。同社は今回、初めてEC販売に乗り出した。この新しい取り組みを通じて、従業員の雇用を守りながら、ユーザーがパン作りに魅力を感じてもらうことを目指しているという。
コロナウイルスの感染拡大やそれに伴う生活スタイルの変化によって、業績が伸びている業界もあれば、今回のように営業が難しい業界もある。現状に対応するために、企業が新しい事業形態に切り替えたり、新しいサービスが生まれたりするなどの変化は今後もみられるだろう。