近年、衣服の廃棄問題に対して注目が集まっている。日本における衣類廃棄量は2020年時点で年間約51.2万トン。廃棄された衣類の半分以上は焼却処分されている。
そうした問題を背景に、繊維商社の豊島株式会社主催、atelier HIKITSUGIが運営する参加型リメイクコンペティション「Clothes Renovation Contest」が昨年始動した。ファッション業界の課題の中でも大量廃棄の問題に焦点を当て、ファッション業界のサステナビリティ実現に向けて、リメイクにおける個人のクリエイティビティとセンスで貢献できるコンテストだ。
提供されるのは、廃棄されてしまう新品の服。これらの服の中から、参加者1名(1団体)につき5点までを使用し、自由にリメイクする。コンテストを通じて、廃棄される服を減らしながら参加者自身のリメイクスキルも磨くことができる。
前回のコンテストで最優秀賞に輝いたのは、白い服から作られた「エシカル・ウェディングドレス」だった。一般的な衣服からリメイクされたとは思えないボリューム感が演出され、裁断の残り生地はフリルやコサージュなどの小物に余すことなく使用された。他にも、デニムで作られた子ども用の羽織袴や、様々な素材をつなぎ合わせたコートやバッグなど、個性的な作品が多数寄せられた。
今年の春からは第2弾のコンテストが実施されている。これまでの参加者は200名を超え、廃棄を逃れた衣服は約1000着にのぼる。今回、このコンテストを運営しているメンバーの一人である亀甲かりんさんに「Clothes Renovation」のお話を伺った。
Q. なぜ「リメイク」に注目したのですか?
古着でも新品でも、着なくなった洋服ってサイズが合ってなかったり、シルエットが好きじゃなかったり、ダメージがあったり……とトキメキを感じなくなってしまったものだと思います。そこに手を加えることで自分好みに復活できるなら、まだまだ着られる服を捨てずに済み、しかも愛着を持って着続けることができる。私たちのメンバーの一人にリメイクができるメンバーがいるのですが、その作品を見て、趣味として終わらせるのではなくもっと世に出したいな、リメイクで服を長く使うことをもっと広めたいな、と思ったことがリメイクに注目したきっかけです。
Q. リメイクコンテストを実施してみて、印象的だったことはありますか?
参加者の皆さまの熱意と才能にとにかく圧倒されました。サステナブルに関してよく勉強していて、今のファッション業界のあり方に疑問をもっている方が想像以上に多いんだなと。そして縫製のプロではないのに、リメイク技術のレベルが高い人がこんなにもいるということにも驚きました!
Q. 実際に参加者からどのような声がありましたか?
嬉しいことに、「コンテストに参加できて楽しかった」「服と向き合えた」「ファッションの廃棄について改めちゃんと考える機会になった」という声をたくさんいただいています。ファッションロスについて考えることがあっても、実際に「廃棄予定」のきれいな服を目の前にして、誰かが丁寧につくったのに袖を通されることもなく捨てられるのか…ということを改めて感じいただけたようです。
Q. 今後ファッション業界をサステナブルにするために、必要なことは何だと思いますか?
一人一人が、コンテストの参加者のみなさんのようにファッションの廃棄問題などに「はっ」とする機会が増えて行けていけば、少しずつ意識や行動が変わってくると思います。「一度着て元が取れればいいや」という服を選ぶのではなく、長く着れて、好みが変わったらリメイクしたり、他の人に継いで循環させることができる洋服を選んでいけば、業界も変わっていくのではないかなと思います。
インタビュー後記
近年、エシカルファッションといった言葉自体もよくメディアで目にするようになり、少しずつ消費者の意識が変化していることを感じる。同時に、ブランド側もオーガニック素材やリサイクル繊維の商品を展開するなど、「サステナビリティ」を意識するようになってきている。一方で、マテリアルをサステナブルにしていても、そもそもの「大量生産」システムへの打開策はなかなか見えてきていない。そういった中で、atelier HIKITSUGIの取り組みは、リメイクの楽しさを通して社会課題自体へ目を向けることができるポジティブなアクションなのではないだろうか。