私たちは日々、食べ物を摂取し、排泄するという一連のプロセスを行うことで生きている。しかし、その排泄物がいったいどのように処理され、どこへ行くのかを改めて考えてみたことはあるだろうか?
現代の日本に設置されているのはほとんどが整備された水洗トイレで、清潔に整えられていることが多い。しかしこの水洗トイレは、大量に水を使用するため、場所によっては深刻な環境汚染につながっているという。また、アジアやアフリカを中心とする発展途上国では、水で流された排泄物が適切に処理されないために起こる感染症で、たくさんの人が命を落としている。
この深刻な問題の解決策のひとつとなり得るのが、人間の排泄物を発酵させ、植物を育てる堆肥に変えることができる「コンポスト(堆肥)トイレ」だ。本記事ではその中でも、北欧の国ラトビアで建設された、一風変わったユニークなものを紹介したい。
ラトビアの北の緑豊かなZeltini Parishに建設された「temple of poop」は、既成のコンポストトイレユニットを備えた木造の建物で、屋上には香りの良い花が咲く庭園が設置されている。
「人類とその生産行為を祝う」ことをコンセプトに設計されたこのトイレは、ユニット内で作られた堆肥を、芳香植物が育つ屋上庭園に移す。堆肥を利用して育った花の香りを、トイレの使用者が楽しめる仕組みになっている。屋上庭園につながる煙突の付いたファンが、トイレを使う人の顔に花の香りのする空気を送り、心地よい独特の体験を作り出すのだ。もうひとつの煙突は、排泄物の悪臭を抽出し、堆肥化ユニット内で排泄物の堆肥化を早める役割を果たしている。どのような季節にも快適に使用できるように建物は断熱されており、中に設置された窓からは、外に広がる美しい景色を眺めることができる。また、屋上庭園に必要のない余分な堆肥は、隣接する土地を肥やすために使用されている。
このtemple of poopを建設したZELTINIは、製品とサービスにより世界をより良くすることを目指す地域に根ざしたデザイン会社で、地球の資源への影響を最小限に抑える持続可能なビジネスの創出に努めている。このトイレの他にも、自転車とボートになる電動キャンピングカーや水陸両用の船など、どの作品も非常に斬新でユニークだ。
コンポストトイレの大きな利点は、水を全く使用せずに排泄物を処理できることだ。水を使うことができない場所や下水処理設備がない場所に設置することで、水不足や水質・土壌汚染のソリューションになるため、近年では建設現場への導入も検討されている。また、排泄物を堆肥化するとほとんど無臭の腐植土となるため、トイレの臭いが発生しにくいこともポイントである。
コンポストの技術自体は古くから使われており、日本でも江戸時代には、人間の堆肥を活用していた。こうした「資源を無駄にせず循環させる」という自然界の仕組みに基づく考え方は、常に持続可能な未来をつくるヒントとなる。私たちの日々の営みが、環境に及ぼす影響に目を向けることを忘れず、より良いソリューションを模索していきたい。
【参照サイト】ZELTINI