ドイツでは、郵便投票が徐々に馴染みのある投票方法になってきている。1990年代のドイツ連邦議会選挙で郵便投票をした人の割合は10%前後だったが、2013年には24.3%、2017年には28.6%と割合が伸びてきている。郵便投票を利用すると、選挙期日前であっても投票ができるため、忙しい人にとって便利な仕組みだ。
ドイツ航空大手のルフトハンザは、より多くの人が郵便投票を利用することで投票率を向上させたいという狙いから、普段はなかなか入れない“特別な場所”で投票用紙に記入して郵便投票を行える「#SayYesToEurope 」というイニシアチブを支援している。投票行為をレアな体験にすることで、多くの人に「投票したい」と思ってもらうのが目的だ。
普段はなかなか入れない場所の一例として、エルプフィルハーモニーというコンサートホールのステージがある。通常であれば指揮者しか立つことのできない場所に投票所が設置され、有権者は荘厳な雰囲気に包まれながら投票に参加できる。他にも「クイズ$ミリオネア」のようなクイズ番組のスタジオ、ルフトハンザのフライトトレーニングセンターなどに投票所が設置されたことがある。
#SayYesToEuropeに参加するには、まずサイトで自分が行きたい場所を選択してサインアップする。次にオンラインで投票用紙を請求するか、郵便投票の通知が届くのを待って申請書を返送する。あとは届いた投票用紙を持って、指定した日時にその場所へ行く。投票用紙への記入が終わったら、ポストに入れて完了だ。投票用紙は特別な場所に入るためのチケットにもなるので、忘れないよう気をつけたい。
この取り組みはソーシャルメディアでも話題になり、1億4900万人以上の人に情報が行き渡ったという。約3万8000人が#SayYesToEuropeで投票するためにサインアップし、人々の選挙に対する関心を高めることに一役買った。ドイツでは2019年の欧州議会選挙の投票率が61.4%となり、2014年の48.1%から約13%も伸びたという。
#SayYesToEuropeの投票所は、自国の投票用紙を持った欧州市民であれば誰でも利用できる。こうしたユニークな発想の転換が、国民の政治意識を高め、国の誇りを再認識する一歩となるのだろう。
【参照サイト】 #SayYesToEurope