観客は観葉植物。新型コロナ禍でバルセロナのオペラハウスが異例の再開

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新型コロナウイルスの影響により、我々の生活様式の一部は決定的に変わってしまった。なかでも、人々が密集する観劇やライブ、大規模なイベントは再開が危ぶまれている。日本でも、映画館などの娯楽施設は、新型コロナウイルス感染症対策のために座席を一つ開けて座る、消毒を徹底する、などの対策を行った上で営業を再開した。

劇場の空いた座席を見る寂しさは拭えない。しかし、この状況を逆手にとって、スペイン・バルセロナの大劇場「Gran Teatre del Liceu」は、 観葉植物を観客にみたてたクラシックのコンサートを開催した。これは現代アーティストEugenio Ampudiaの協力を得て制作されたアート作品でもある。

Image via CNN

演奏された曲は、プッチーニの『菊の花』だ。人間の観客は現地での鑑賞ができなかったが、公演の様子は公式YouTubeチャンネルでライブ配信され、現在もアーカイブ動画で視聴可能だ。

Gran Teatre del Liceuによれば、この形での公演を定期的に続けるかどうかは未定だが、今回のイベントは「芸術、音楽、自然の価値を擁護する非常に象徴的な行為であり、私たちの活動へ還るための紹介状」であるという。演奏を鑑賞した植物は、バルセロナ現地の病院で働く医療従事者へと “演奏会に参加した植物” との証明書つきで寄付される予定だ。

筆者も実際に公演動画を観てみたが、カルテットの奏でる弦楽器の音と、植物たちが密集する会場には、まるでSF作品で人類が滅んでしまったあとの世界のような、少しの寂しさと奇妙さを覚える光景が広がっていた。Gran Teatre del Liceuの芸術監督とキュレーターは、劇場再開のための序奏である今回の取り組みが「自然とともに人間同士のつながりを取り戻そうとする」ものであると発表している。新型コロナウイルスによる被害が甚大だったスペイン全土に対する鎮魂の意図も感じられる作品だ。

Gran Teatre del Liceuの公式Youtubeチャンネルでは、過去の公演の紹介動画や、団員のオンラインセッション動画なども公開されている。また投稿動画の中には、著作者が自らの著作物の再利用を許可する「クリエイティブ・コモンズ」に登録されているものもあり、世界中で楽しめるようになっている。興味をもった読者は、ぜひ鑑賞してみてほしい。

【参照サイト】Barcelona Opera House Reopens With Concert For 2,292 Plants
【参照サイト】LiceuOperaBarcelona YouTube

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