日本では1月7日から、首都圏を中心に2度目の緊急事態宣言が発令され、現在も継続中だ。夜8時までの営業自粛要請は、この1年、新型コロナウイルスで打撃を受け続けた飲食店の経営にさらに大きな影を落としている。賑わいのあった飲み屋街も、少しずつシャッターが増えてきた。
欧米では、ロックダウンによる飲食店の規制は日本よりはるかに強い。その中でも新型コロナによる打撃の大きいスペインでは、2021年の5月9日まで、原則午後11時から翌朝6時までの外出を禁止するロックダウンを継続すると発表されている。レストラン、特にバーなどのアルコールを提供する飲食店は感染対策のために1年近く閉鎖されている状態だ。
いくら休業補償が出るといっても、店を開けた状態の収入とは比べ物にならないということはいうまでもない。スペインではその休業補償も受け取るのに時間がかかり、多くの店舗の経営が悪循環へ陥っている。
こうした飲食店を取り巻く悲惨な状況の中で、ハイネケンが新しい広告のキャンペーンを展開した。それは、店のシャッターを広告として使用し、広告収入をその店舗への支援に充てる、というものだ。
“Shutter Ads”と名付けられたこのユニークな広告プロジェクトは、ハイネケンとクリエイティブエージェンシーのPublicis Italyと共同で、カタルーニャ州バルセロナ市内のおよそ15軒のバーのシャッターにて行われた。
広告には、ハイネケンを象徴するカラーである一面の緑色と赤い星が印刷されている。その上に、店の再開を期待するポジティブなメッセージが添えられているデザインだ。メッセージは、「今日は広告を、明日はバーを楽しんで」、「こう見えてこのバー、エネルギー充填中」といったものだ。
一連のキャンペーンは、休業期間中の小規模飲食店事業者の倒産を防ぐことが目的だ。そして同時に、店内飲食が再度可能になるまで乗り切ろうとオーナーを励ますためのものでもある。スペインで始まったこの企画は、現在アルゼンチンにも持ち込まれているという。
広告は、少し間違えば偏ったイメージを人々に与えてしまうことがある。だが、ハイネケンのこうしたポジティブな広告の打ち方は、コロナで先が見えず不安な人々の生活に寄り添っている。今後、世界にはこのような未来の明るさを予見させるような広告が増えていくのだろうかと考えさせられるニュースだ。
【参照サイト】Heineken
【参照サイト】「もう無理」スペイン緊急事態で慟哭する飲食店
【参照サイト】スペイン、全土の緊急事態宣言を来年5月まで延長
Edited by Megumi Ito