近年深刻化する森林破壊。国連の報告によると、2015年以降毎年失われている天然林の面積は、約10万平方キロメートルであり、これは東京都と同じくらいの大きさの森が、今も1週間ごとに失われ続けているということを意味する。世界の森林破壊は熱帯を中心とする限られた地域で起きており、2010年から2030年までに起こる森林破壊の約80%は、南米やアフリカといった地域に集中すると予測されている。
そのように急速に失われつつある地球の森林環境の再生を実現するのが、森林アクションプラットフォーム・アプリ「weMORI(ウィモリ)」だ。開発したのは日本発の国際非営利団体weMORI。環境アクティビストの清水イアン氏を代表に2019年より始動したweMORIは、再生型社会の実現をビジョンに掲げ、森林環境再生のために、世界中のコミュニティを巻き込む森林アクションプラットフォームを始動させた。
weMORIでは、「簡単なアクション」と「コラボレーション」を通じて、世界中のコミュニティを動員し、具体的な森林保全活動を進めていく。
それでは、ユーザーは実際どのようにアプリを使うのだろうか。weMORIでは、世界中で必要とされている森林アクションへの寄付が指先ひとつで完結する「ワンタップ寄付」ができる。また、アプリ内の「森林コミュニティ機能」では学生団体や企業がチームで目標寄付金額を設定し、コミュニティとして達成チャレンジを行うこともできるのだ。
さらに「森林ダッシュボード」では、寄付によって再生した森林面積、その森林に生息する野生動物・植物、削減できたCO2の総量などの情報がわかりやすく可視化され、いつでもアクセスして確かめられる仕組みとなっている。
こういった取り組みを通して、アプリ発表から3年以内に明治神宮100個分以上の森林を保護し、100万本の木を森に植林するとともに、2030年までには不要な森林伐採を止めることを目指している。
開発の背景には、昨年、国内外で話題となったアマゾンやオーストラリア、インドネシアでの森林火災やそこで失われた生物多様性に対する課題意識がある。加速する森林の減少を食い止める「森林アクション」を、毎朝一杯のコーヒーを買うような気軽な行動として行えるよう喚起しているのだ。
weMORIを立ち上げた代表の清水イアン氏は、これまで講演活動やラジオ出演、イベントなどを通じ、地球環境問題とその改善のためのアクションを広める活動を続けてきた。そんな清水氏が屋久島旅行中に出会ったのが、偶然ノルウェーから観光に来ていたUXデザイナーのアレキサンダー・ヤーレ・シガーズ氏だった。
そして、清水氏とシガーズ氏が「自然を愛する」想いを同じくしてタッグを組み、生み出されたのが「誰でも簡単に森林を守ることができるプラットフォーム・アプリ」というweMORIのルーツとなるアイデアだった。weMORIチームには、コアメンバーの他にも、イギリス、ノルウェー、ニュージーランド、日本、アメリカ、シンガポール、コロンビアなど、世界中から若手メンバーが携わっている。
2020年7月7日からは、アプリ開発完了に必要な資金調達の一環としてクラウドファンディングがスタート。木1本の植樹を行うことからサポート可能であり、谷川俊太郎氏をはじめとした、weMORIに共感し支援を表明する各国代表アーティストとのコラボ作品を「限定リワード」として購入できる。
発芽する和紙に印刷されたアートポスターや、洋服の生産過程において出てしまう残布を活用したアップサイクルのプロダクトなどがリワードに登場している。なお、このクラウドファンディングは2020年8月8日に終了する。
普段、環境問題について関心を向けていても、なかなか日常生活の中でその解決に向けたアクションを実践することは難しい。同様に、エシカルな消費を心がけても、実際にどんなインパクトがあるのか追跡するのが困難だ。しかし、今回紹介したweMORIのように、自身のアクションによる成果や森林保全のプロセスが可視化されることで、ユーザーもモチベーションを高めることができるように感じた。読者の皆さんも、手軽に環境問題に取り組める一つのツールとして、日常生活の中で試してみてはいかがだろうか。
【参照サイト】weMORI
【参照サイト】Kickstarter weMORI
Edited by Megumi Ito