都市社会学の研究によると、都市規模が大きくなるほど、人と人とがつながる回数が増えるという。また、人口規模が大きくなるほど、より多くのアイデアや創造的活動が生まれる。大きな都市にいる人ほど価値観の近い友人と出会いやすく、共通の関心で結ばれた多様なネットワークを形成できる。
ドイツのミュンヘン市は、子どもがこういった都市ならではの魅力を体感するとともに、都市がどのように運営されているのかを学ぶため、子どもたちによる都市運営のプログラム「Mini-Munich(ミニ・ミュンヘン)」を開催している。開催期間は夏の約3週間で、この間7~15歳の子どもたちが街を占拠し、政府の仕事や事業運営などを疑似体験する。仕事に就いたり、税金を納めたり、法案を通したりできる、本格的なプログラムだ。
2020年のミニ・ミュンヘンは、7月27日から8月14日にかけて開催された。開催時間は月曜~金曜の10時から17時までだ。いつもは1日に2000人ほどの子どもたちがプログラムに参加していたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大を受け、参加者数を1日1000人ほどに制限。また、ソーシャルディスタンスに配慮し、会場を北・中央・西・東と複数拠点に分散した。
世間の出来事をよく見ている子どもたちは、とても真剣に、ときにユーモラスなアイデアを思いつく。今年のミニ・ミュンヘンでは、公園の池に小さな島をつくる子どもが現れたため、島への旅行を手配する旅行会社が設立されたという。また、西拠点の子どもたちは、都市の公的機能が特定の場所に集中していることに対する不公平感から、途中で独立を宣言。子どもたちは長い話し合いの末、いくつかの点で合意し、最終的に都市は再統一された。
子どもたちにこれだけの自己決定を促すことは、このイベントの重要な側面だという。子どもは都市空間をコントロールする経験を通して、街が大人だけのものではなく、自分たちがそのあり方を変えることができると、当事者意識を持つようになる。また、ミニ・ミュンヘンには子どもたちの活動をサポートするために、日々200人ほどの大人も参加するという。
ミニ・ミュンヘンは大規模なイベントで予測できない事態が多発するが、子どもたちに都市の複雑さを体感してもらうには、これぐらいの規模が必要だろう。集まった子どもたちは始めはほとんどが知らない人同士で、そこから状況を俯瞰し、他人との交渉を積み重ね、やがて街は目まぐるしく変わっていく。そんな都市の華やかさと混乱を、目の当たりにするのではないだろうか。
(画像:Kultur&Spielraum eV)
【参照サイト】 Spielstadt Mini-München
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Edited by Erika Tomiyama