コンセプトは「禅」。ドライバーの心と車を充電する電気自動車スタンド

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あなたは、街中や高速道路のサービスエリアに設置されたガソリンスタンドにどんなイメージを抱いているだろうか。普段よく目にするガソリンスタンドでは、建物や看板に無機質な色や素材が使われていたり、排気ガスの臭いが充満していたりするなど、心が安らぐ場所とは言いがたい。

そんなガソリンスタンドのイメージとは打って変わりデンマークに登場したのが、木をふんだんに用いた「超高速充電ステーション」だ。現在世界中で普及が急がれる電気自動車の充電場所として、昨年5月にデンマーク中部のフレゼリシア市に誕生。今年、同じくデンマーク中部のグレートベルト・リンクのウェストブリッジに2件目がオープンした。

(c)Rasmus Hjortshøj – COAST

この超高速充電ステーションの目的は、「禅のような快適で落ち着いた雰囲気を提供し、車両とドライバーの両方のバッテリーを充電すること」。充電ステーションの設計を担当したデンマークの設計事務所COBEの創設者・ダン・ストゥバーガード氏は、「私たちのデザインは、ドライバーにタイムアウトと緑のオアシスで精神的に充電する機会を提供する。」とCOBEの公式サイトの中で述べている。

この超高速充電ステーションのデザインは、2018年のデンマーク建築賞のインフラストラクチャー賞を受賞した。

(c)Rasmus Hjortshøj – COAST

充電ステーションの詳細は以下のとおりだ。まず、充電ステーションは「ツリー」で構成される。木のようにそびえるツリーは快適な日陰をつくりだし、モジュール式であるため必要に応じて拡張できる。充電ステーションは認証済みの木とコンクリートでつくられ、ソーラーパネルが屋根に設置されている。

さらに、周辺の生物の多様性を高めることも目的として、COBEとデンマーク自然保護協会がともに選んだ木や芝生、その他の植栽がステーションを取り囲んでいる。使用されたすべての建材は、再利用可能およびリサイクル可能な材料に分解できる持続可能な設計だ。まるで自然の中にいるようにリラックスした空間を提供し、ガスや排気ガスの臭いがする従来のガソリンスタンドとは対照的なつくりである。

昨年フレゼリシア市にオープンした超高速充電ステーションは4台の電気自動車を同時に充電でき、12本の「ツリー」で構成されている。充電にかかる時間は約15分だ。

(c)Rasmus Hjortshøj – COAST

デンマークとスウェーデンとノルウェーで構成されるスカンジナビア諸国は、高速道路に沿って充電ネットワークを構築するべく、今後5年間で48の超高速充電ステーションの建設を計画している。すでに営業を開始した2つの充電ステーションはその一部として建設された。

スカンジナビア諸国では電気自動車やゼロエミッション車の普及が急速に進められており、デンマークとスウェーデンは2030年までに、ノルウェーは2025年までにディーゼル車とガソリン車の新車販売を禁止することを発表している。

電気自動車の普及にあたって、価格の改善からバッテリーの寿命、バッテリーのリサイクルの向上や充電設備の充実まで、様々な課題があるが、超高速充電ステーションの建設は、これらの課題解決に貢献するものとなりそうだ。日本に馴染みのある「禅」をコンセプトにした超高速充電ステーション。ドライバーや同乗者、地域住民や地域の景観にも穏やかな環境と清潔感を与える安らぎの場となるだろう。

【参照サイト】Cobe
【参照サイト】Sweden to ban fossil-fuel cars by 2030

Edited by Tomoko Ito

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