世界最大の小売業者・スーパーマーケットチェーンのウォルマート(Walmart)が、サーキュラーエコノミーを超えた、「リジェネラティブ」な企業に向けた目標を発表している。リジェネラティブ(Regenerative)とは、「再生的」「繰り返し生み出す」といった意味だ。地球環境の持続可能性を追求するだけではなく、環境を再生しながら、生態系全体を繁栄させていく考え方である。
同社は米国時間9月21日、2040年までにゼロエミッションを目標とし、2030年までに少なくとも5,000万エーカーの土地と100万平方マイルの海を保護、管理、回復することを宣言した。
ウォルマートのプレジデント兼CEOであるダグ・マクミロン氏は「われわれは、世界のサプライチェーンを再生可能なものに変える役割を果たしたいと考えています。いま、気候変動と自然破壊の危機に直面しており、皆が緊急に行動する必要があります」と述べる。
ではウォルマートは、実際にどのように取り組んでいくのだろうか。リジェネラティブな企業の取り組みとして、同社は具体的に次のような対策を挙げている。
2040年までにグローバルオペレーションをゼロ・エミッションにするための対策:
- 2035年までに施設を風力・太陽光といった再生可能エネルギー運用率を100%にする
- 2040年までにトラックを含む全車両を電気自動車にし、ゼロエミッションにする
- 2040年までにインパクトの小さい冷却剤への移行、そして店舗・クラブ・データセンター・配送センターの暖房機器を電気化する
2030年までに少なくとも5,000万エーカーの土地と100万平方マイルの海を保護、管理、回復するための対策:
- ウォルマートが1エーカーの土地を開発するごとに、少なくとも1エーカーの自然環境を保護する
- リジェネラティブな農業プラクティス、持続可能な漁業管理、森林保全・再生を採用する
- 資金投入やサプライヤーとの協力により、自然エコシステム保全や暮らし改善の努力をする
- 2025年までにパーム油、ビーフ、大豆、パルプ、紙、木材の供給で100%、森林破壊をなくす
ウォルマートのサステナビリティ担当であるキャスリーン・マクローリン氏は「ウォルマートのビジョンは、自然の資源を保護・再生・サステナブルに使用すること。そして、食品と商品サプライチェーンをリジェネラティブにし、自然とハーモニーを奏でながら機能するようにすることです」と述べる。
ウォルマートは、全世界27カ国・1万1,500ストア(実店舗、オンライン)で、1週間に2億6,500万人が利用し、収益(2020年度)が5,240億ドルにのぼり、220万人を雇用する大企業だ。
規模が大きいだけに、ウォルマートのリジェネラティブな取り組みは、大きな効果を生み出すことが期待される。一方で、同社のサプライチェーンがグローバルに広がっており、生産地が開発途上地域にあることもしばしばだ。先進国にある本社が掲げた目標達成のために、弱い立場にある生産者が取り残されないように、しっかりとケアを行うことも大事になってくるだろう。
【参照サイト】Walmart
Edited by Kimika Tonuma