服の作り手にチップを。ワンクリックで工場労働者に感謝できる「tip me」

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華やかに見えるファッション業界が、現在さまざまな問題と直面していることをご存知だろうか。環境問題はもちろん、女性や少数民族といったマイノリティを低賃金かつ劣悪な労働環境で働かせるスウェットショップなど、労働と人権に関する問題が各地で起きている。バングラデシュでのずさんな安全管理が原因で起きたラナプラザ崩落事故は、ファッション史上最悪の事故と呼ばれるほどだ。

サプライチェーンの中で誰かが負担を強いられていたとしても、買い手からは生産者の現状が見えづらく、「デザインが良く低価格」なブランドに私たちは購買意欲をかき立てられる。結果、ブランド側が生産者から搾取を続けられる現状がファッション業界にはある。

そんな現状に不満を感じたドイツの起業家ジョナサン・ファンケ氏が、衣服の作り手と買い手を直接つなぐサービスを開発した。「tip me」と呼ばれる本サービスでは、ブランドのサイトで商品を購入する際に、縫製工場でその商品づくりに携わった人の写真と名前を見ることができる。感謝の気持ちを伝えたいと思えば、オンラインで直接チップを支払えるのだ。

tip me

この仕組みは、衣服の購入一歩手前で「この作り手にチップを渡します」と選択し、金額を入力することで使うことができる。まるで、航空券を購入する際に飛行機が排出するCO2を減らすため、航空会社に少しプラスのお金を払うことで植樹などのプロジェクトに充ててもらうカーボンオフセットのようだ。

tip meではチップを渡す相手は個人であり、チップの使用用途まで見ることができる。商品購入と同時にチップが支払われると、tip meが商品を作っている工場と連絡をとり、給与支払いシステムを介して労働者の名前や電話番号、銀行情報などを入手し、チップを直接口座に全額入金。その後、メッセージアプリなどで商品の購入者に入金を通知するという。

tip me

tip meは、ファッションブランドと契約する際には、ブランドの工場が労働者の人権を損害していないかを一定の基準を持って確認している。人権意識が徹底されており、購入者は安心してチップを渡すことができる。

創設者のジョナサン氏は当初、購入者のうち5~15%ほどがチップシステムを利用すると想定していた。しかしサービスを始めてみると、購入者の約半数が利用しているので驚いたそうだ。商品の背後にいる個人が見えることで親近感がわき、より感謝の気持ちを伝えたくなるのだろう。

衣服の作り手と買い手を直接つなぐtip meは、ファッション業界のサプライチェーンを透明かつ倫理的に変える足がかりになるかもしれない。本サービスを知ったことをきっかけに、自分が着ている服は誰が作っているのか、ときどき思いを馳せてみてはいかがだろうか。

tip me – the global tip from Jonathan Funke on Vimeo.

【参照サイト】tip me
Edited by Kimika Tonuma

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