社会に存在するごみの半分以上が、建造物から発生している。建物を解体する際には大量の廃棄物が発生し、そうした廃棄物の処理によって、CO2が発生したりごみの埋立地が埋まったりと、環境に大きな影響を与えている。ナショナル・ジオグラフィックの調査によると、世界の30%の温室効果ガス排出は都市での建設により発生しているという。
このような問題を解決するため、建物の解体で廃棄物を出さないようにデンマーク・コペンハーゲンにある建築スタジオ「ADEPT」がデザインしたのが、同国の複合施設「The Braunstein Taphouse」だ。解体後に建物の資材をリサイクルできるよう、分解可能なデザインになっている。分解可能を実現するため、建物はできるだけシンプルに、取り外し可能な結合部品で作られており、それにより別の場所で建物を再建築したり、部品を他のプロジェクトに再利用することができるのだ。
さらに、ソーラーパネルと自然換気を備えることで、電力を節約している。また、壁面に塗料を使用せず、木製の床は地元のフローリングブランドから発生した廃材を利用。正面には、適正に管理された森林から産出した木材をつかった「FSC認証」を受けた、カーボンニュートラルなアコヤ木材を使用している。全体的にできるだけ使う資材を少なく、サステナブルなものを使うことで、他の建造物と比べて廃棄物の量を減らしているのだ。
「The Braunstein Taphouse」は、隣接する小さなビール醸造所に訪れる、年間15,000人の旅行客のビジターセンターとしての機能に加え、地域の新しいコミュニティーセンターとしての役割を担う。地域住民がつながれるよう、1階にはカフェとレストランが併設されており、2階にはミーティングやイベントを行えるスペースが設置されている。
港に隣接する「The Braunstein Taphouse」は、港から町への玄関口として、バルト海と町とのつながりを象徴している。ADEPTによると、港に建つ古い倉庫から着想を得たと言う。
建物自体が環境に優しいだけでなく、地域の人と人とのつながりを作り、海と町とのつながりをも象徴する「The Braunstein Taphouse」。デンマークの港町からサステナブルな建築を発信すると共に、沢山の人の憩いの場となることが期待される。
【参照サイト】 The Braunstein Taphouse – ADEPT
Edited by Erika Tomiyama