デンマーク・コペンハーゲンが「肩の高さまであるベンチ」を設置する理由

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2022年4月、デンマークの首都コペンハーゲン市に、大人の肩くらいまでの高さに引き上げられた公共のベンチが登場した。

コペンハーゲン市とのタイアップでこのキャンペーンを実施した国営テレビ局、TV2デンマークによれば、人々の気候変動と海面上昇に対する意識を「高める」ねらいがあるという。これはいったいどういうことなのだろうか。

地球温暖化に伴う気候変動は、洪水、海面上昇などの異常気象を引き起こす。このベンチの高さは、国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表した2100年における海面上昇値である、85センチメートルまで引き上げられているのだ。

コペンハーゲン市を中心に、デンマーク国内15箇所に設置されたベンチには「私たちが何かし始めない限り、洪水は私たちの日常生活の一部になるだろう」という警告が書かれた銘板まで取り付けられている。コペンハーゲンの市民はこのベンチで海面上昇の未来を体感することで、危機感を駆り立てられるのだ。さしずめ、将来の危機の「見える化」といえるだろう。また、ベンチは4週間の設置期間終了後、都市空間家具メーカーのGHフォームによって再利用される。

コペンハーゲン市は、2011年に激しい集中豪雨に襲われた。それ以来、2025年までの二酸化炭素排出ゼロを目指すまちづくりを計画するなど、環境問題に対して先進的な取り組みを続けている。

コペンハーゲン市の取り組みのユニークなところは、都市として成長しながら、市民の生活の質を上げ、同時にカーボン・ニュートラルも達成していく点だ。例えば、コペンハーゲン市の掲げる環境政策の重点分野に、グリーン・モビリティがある。自動車を使う代わりに、自転車や公共交通機関の利用を促進するのがその施策の1つだ。「自転車を使うと健康によく、生活の質も上がる」。こんなふうに人々に訴えかけ、人々を巻き込み、意識や生き方を変えるアプローチがとられている。

もちろん、コペンハーゲンは市としても再生可能エネルギーへの転換や、海面上昇対策として堤防の増強といった技術的対策に取り組んでいる。だがそれだけにとどまらず、人々の意識を変える人間中心のアプローチにも取り組んでいるのだ。

気候変動への対応や、プラスチックごみの排出削減など、持続可能な社会の実現には私たち一人ひとりの意識をどう高め、どう行動を変えるかが焦点になる。コペンハーゲン市の高さの高いベンチは、「市民が主役」のサステナブル・シティを象徴するアイデアといえる。

Foto via Søren Solkær / TV 2
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【参照サイト】CPH 2025 Climate Plan – English
【参照サイト】Copenhagen Climate Adaptation Plan
【参照サイト】Vandstandene stiger: Sådan kan fremtidens bybænke komme til at se ud

Edited by Erika Tomiyama

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