米国立雪氷データセンター(NSIDC)によると、北極海の海氷が2020年9月半ばに、42年間の観測史上2番目に小さい面積にまで融解したという。その面積は374万平方キロで、同センターはこれを「北極の温暖化の一例」と指摘している。
このように地球は気候変動による危機的状況に直面しているが、そのスケールが大きすぎるあまり、身近な問題として捉えにくい人もいるのではないだろうか。フィンランドの新聞社であるヘルシンギン・サノマットは、人々に気候危機の緊急性をわかりやすく伝えたいとの想いから、北極の氷が溶ける様子を反映したフォント「Climate Crisis Font(気候危機のフォント)」を開発した。
このフォントは、スライドを左右にドラッグすることで文字の太さが変わり、1979年から2050年にかけて北極の氷が溶けていく様子を可視化している。1979年の時の文字はとても太く、氷の重量感を感じるフォントになっているが、2050年に近づくにつれて文字が細く曲がっていき、まるで氷がなくなってしまったかのように見える。私たちに忍び寄る危機を、リアリティをもって表現しているのだ。
フォントは、海氷面積の過去のデータと将来予測に基づいてデザインされており本格的だ。1979年から2019年までは米国立雪氷データセンターのデータを反映しており、2050年までの予測は「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の情報を参照している。事実に基づくことにこだわっているため、2000年頃に海氷面積がわずかに増加したことも、フォントに正確に反映されている。
Climate Crisis Fontは、ヘルシンギン・サノマットのサイトから無料でダウンロードすることができ、メディアや著名人など気候変動問題について発信したい人は誰でも使える。ポスターや動画など、その使い道は様々だ。同社がサイトに載せている使用例も、ぜひ参考にしたい。
同社のアートディレクターであるトーマス・ヤースケライネン氏は、Dezeenの取材で「メディアには、複雑な問題をわかりやすく伝える責任があります」と話している。新聞社としての使命感が、フォントの開発など発信の仕方に現れている。
あなたは環境問題について、「どのように」意見を述べたいだろうか。ヘルシンギン・サノマットの取り組みを参考にしつつ、少し考えてみるといいかもしれない。
【参照サイト】 Climate crisis font | Helsingin Sanomat (hs.fi)
Edited by Erika Tomiyama