廃自動車の窓ガラスをアップサイクルした食器「mado」

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いま、日本では年間で約350万台の自動車が廃棄されていることをご存知だろうか。経済産業省によると、自動車の総重量のうち約80%がリサイクルされ、残りの約20%が工業用シュレッダーによって破砕され、埋立処分されている。近年、埋立処分に使用される最終処分場が不足してきたことや、それに伴う処分費用の高騰が問題となっている。

沖縄県の大手リサイクル会社である「拓南商事」はこれまで、月におよそ6,600台の廃車を解体し、リサイクルできない窓ガラスは県外の埋立処分場に送っていた。これらにかかる処理コストは、月に600万円以上にもなっていたという。

そんな中、拓南商事は手作りガラス工房の「琉球ガラス村」と協業で廃自動車の窓ガラスを破砕・収集し、琉球ガラスの職人の手によって食器に生まれ変わらせるプロジェクト「mado」をスタートした。

左:ダイヤ柄、右:モール柄

mado 左:ダイヤ柄、右:モール柄

「沖縄のガラス」といえば多くの人が思い浮かべるであろう、琉球ガラス。琉球ガラスは戦後、物資が不足していた時代に始まった。米軍基地の中で、米兵が捨てるジュースの空き瓶を集めてガラスを再利用し、当時のガラス職人たちが琉球ガラスとして生活用の雑器を作りはじめたという歴史がある。そうした背景もあり、沖縄県内ではもともと、「琉球ガラスは再生ガラス」というイメージが根付いていたという。

琉球ガラス村を運営するRGC株式会社の広報である當眞大地さんは、「1980年代に入ってからは原料を調達しやすくなったことで、バージン原料を使用するようになったのですが、今回拓南商事さんからお話をいただいて、久しぶりに再生ガラスに挑戦することになりました。」と、table sourceの取材に答えている。

madoシリーズには現在、ロックグラスやタンブラー、小鉢などの商品があるが、それぞれダイヤ柄とモール柄の2種類を用意。モール柄は琉球ガラスの歴史の中でも初期から使われている模様で、物資が不足していた時代は、モール柄を作るために廃車のタイヤホイールを利用していたという。

また、當眞さんは「現在も、沖縄の職人たちには、物がなかった時代のスキルが残っている」と、語る。「廃自動車の窓ガラスを原料にしたmadoシリーズの制作は、バージン原料を使用したガラス製品の制作に比べて時間がかかり、高度な技術も必要です。しかし様々な手仕事がある中で、職人が使う素材をきちんと選ぶことが、サステナブルな社会の実現につながるのではないでしょうか。」

海に囲まれ、人々が自然の近くで暮らす、沖縄。その沖縄で、自然環境がいつまでも美しくあるように願い、こうしたアップサイクルが生まれることは自然なことであるように思う。また、madoの魅力はその背景にあるストーリーだ。ぜひ商品を手にとって、沖縄の古くからある手仕事に触れてみて欲しい。

【参照サイト】 琉球ガラス村
【参照サイト】 作り手のクリエイティビティを刺激する。廃車の窓ガラスから生まれた食器「mado」

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