大気汚染から身を守る「バス停」香港生まれの空気清浄テクノロジー

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現代の環境問題の一つに、都市の大気汚染がある。関連疾患で早期に亡くなる人の数は世界で年間あたり700万人を超えており、汚染のひどい地域では人々が普通に暮らすこともままならない。

きれいな空気の存在に日々感謝する人は少ないだろうが、それを失うことによる健康被害は甚大だ。2020年から広がりを続けている新型コロナウイルスのような飛沫感染リスクのあるウイルスはもとより、工場から排出される微小な化学物質も私たちの健康的な生活を脅かす。

そんな中、香港で生まれた高性能な屋外空気清浄システム「City Air Purification System(CAPS)2.0」は、都市部での大気汚染による健康被害対策に新たな可能性を示している。

二つの支柱を持つシェルター型のシステムは、人が集まりやすいバスやタクシーの停留所として街中に置かれる。都会に溶け込むスタイリッシュな見た目だが、ただのバス停ではない。空気清浄機としての機能を兼ね備え、通勤・通学する人々に浄化された空気を提供するのだ。

大気汚染を清浄するバス停

香港のデザイナー・Charis Ng氏、イノベーション財団「Sino Inno Lab」とエンジニアリング・コンサルティング会社「Arup」の三者が共同で開発したこの近未来のバス停。CAPS2.0では、デザインとテクノロジーが共に高いレベルで融合し、現代の都市生活にとって喫緊の課題となっている空気環境の問題に挑んだ。

CAPS2.0は周辺の空気を吸い上げ、天井のフィルターを通してPM2.5(微小粒子状物質)などの汚染物質を削減、そしてウイルスも殺菌する。浄化された空気は支柱から放出され、その綺麗な空気は天井の縁から出される二重の気流がカーテンのように働くことで、シェルター内に保持される構造となっている。

研究によれば、CAPS2.0は大気汚染物質への露出を半分まで緩和し、PM0.1大の空中アレルゲン(抗原)を99.95%除去するという。微小な化学物質やウイルスを数秒で撃退し、人々が喘息や末梢動脈疾患にかかるリスクを低減できるのだ。

さらにCAPS2.0には、空気清浄機能以外にも優れた点がある。まず、天井にはソーラーパネルが設置されており、使用電力のうち10%は自発することができる。また特筆すべきは、空気環境のデータを計測・収集するセンサーが搭載されており、後部のLED液晶パネルがシェルター内外の空気に関する情報をリアルタイムで示すIoT(モノのインターネット)の活用だ。

自然の中では森林が行う空気清浄の役割を、都会では人間が作り出したテクノロジーをもって代替する。今後、さらに浄化対象エリアや電気使用量などのスペック向上が進めば、当該分野は大都市の人々の生活水準を大きく改善できる可能性を秘めている。

【参照サイト】CAPS SINO INNO LAB
Edited by Kimika

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