新型コロナウイルス流行に伴うロックダウンにより、家庭内暴力(以下、DV)の被害が世界的に増加している。国連女性機関(UN Women)によると、シンガポールやキプロス島では、DVからの助けを求める声が30%以上増加し、その傾向は他の多くの国でも確認されている。
このようなDV被害の増加を憂い立ち上がったのが、ポーランドの女子高校生・Krysia Paszkoさんだ。Paszkoさんは2020年4月、コスメショップかのように見えるDV被害者支援のFacebookページ『Rumianki i Bratki(カモミールとパンジーの意)』を立ち上げた。
こちらのFacebookページ『Rumianki i Bratki』は、一見すると、フェイスクリームやボディローションなどの商品が紹介されているコスメショップのページのよう。しかし、画面の向こう側にいるのはカスタマーサービスの担当者ではない。そこにいるのは、首都ワルシャワにある女性の権利センターの特別な訓練を受けた、心理学者や弁護士たちで構成されたボランティアチームだ。
ページ上では、「肌の調子」や「コスメ」に関する質問が暗号として使用されており、DVの被害を受けた人は、この暗号を使ってメッセージを送ることで助けを求めることができる。暴力を受ける人の中には、パートナーなどからメッセージアプリのチャットまで監視されている人もおり、その場合、加害者が同じ部屋にいると助けを求めることは難しい。そんな状況を考慮してつくられたのが、今回の偽のコスメショップページなのだ。
これまでに約500人のDV被害者が、無償で提供されるアドバイス(法的なアドバイスも含む)に救われており、相談者の大半が若い女性であったものの、男性からの相談もあったという。
パンデミックが起こり始めた当初、Paszkoさんはロックダウン下でDVが増加している事実を知り、「何か行動を起こさなければいけない」と感じ、活動を始めた。そのときに参考にしたのが、「薬局で『19番のマスクが欲しい』と言うと、虐待の被害を受けていることを暗示的に伝えられる」というフランスで考案されたアイデアだった。
DVの被害状況の深刻化は、日本も例外ではない。2020年4月~9月のワンストップ支援センターへの相談件数は、前年同期比で15.5%増えたと報告されている。国や各都道府県、市町村などによるDV被害者への情報提供や相談センターの設置なども行われているが、我慢や辛抱が美徳とされてきた日本においては、DV被害に遭っていても周りの人に助けを求めづらいケースも少なくない。被害のエスカレートを防ぐためには、今回Paszkoさんが始めたような画期的な取り組みが必要なのかもしれない。
【参照サイト】Violence against women and girls: the shadow pandemic
【参照サイト】‘Just write STOP’: the teenager helping Polish women flee abuse
【参照サイト】Polish teen’s fake beauty site helps lockdown abuse victims
【参照サイト】The ‘Cosmetics Shop’ Using Code to Help People Escape Their Abusers
【参照サイト】東京新聞 コロナと性暴力 多様な対策で防ぎたい
【関連サイト】Rumianki i bratki – naturalne kosmetyki SKLEP
【関連記事】美容師が「DV被害者」を適切な支援につなぐことができる理由
Edited by Tomoko Ito