「ソーラーパネルは環境にいい。」
そのように漠然と思っている人は、多いのではないだろうか。確かに、太陽光発電は温室効果ガスを排出しない環境に優しいエネルギーとして、世界的に普及が進んでいる。
その一方で、既存のソーラーパネルには、問題点もある。例えば、パネルの種類によっては、鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質が含まれている場合がある。そのそれぞれに適切な処理方法があるが、含まれる有害物質の情報が廃棄物処理業者に正しく伝わっていないために、適切な処理が行われていないことも少なくない。また、コストがかかることを理由に、事業者が廃棄処理を行わずに放置・不法投棄を行い、公害が発生する可能性も懸念されている(※1)。
そんな、有害物質や廃棄・処理の課題を解決し、さらには見た目も美しい色鮮やかなソーラーパネルが誕生した。手掛けたのは、オランダのソーラーデザイン事務所・Marjan van Aubel Studio。2021年10月1日から一般公開が始まった「ドバイ・エキスポ2020」のオランダ・パビリオンの屋根に設置されている。
展示物の屋根に設置され、電力供給と太陽光の取り込みの2つの役割を担っているパネルは、展示されている植物の光合成を助けている。しかし何より、このパネルの特徴は、そのデザインにある。“ソーラーパネルは無機質”という従来の認識が覆されるような、ステンドグラスのように透明で美しいデザインが印象的なつくりになっているのだ。
屋根に設置されてあるパネルを通してドバイの太陽光が射し込むと、パネルの青とピンクを用いたラインとパターンが相互に作用。パビリオン内で生み出された美しい光の反射が、空間を色とりどりの光で満たしている。
さらに、特筆すべきはその素材である。パネルは、環境に配慮されたオーガニックな素材や染料から作られているため、廃棄後に適切な処理が行われない場合の危険性も低い。また、薄く軽量のリサイクルPETのフィルムにプリントされているため、パネルの分解、組み立ての作業が容易で、誰でもどこでもパネルを丸めて持ち運ぶことができるのだ。
同デザイン会社は、今回の作品を通して、ソーラーパネル業界全体を変えていきたいと考えているという。単なる“装置”ではなく、デザインの力をもって“作品”にもなったソーラーパネルは、すでにソーラーパネルの常識をアップデートすることに貢献しているのではないだろうか。
「環境にいい」だけで終わらない、なにか新しい工夫が、ソーラーパネル業界の、そして地球の未来をよりよく変えていくことに期待したい。
View this post on Instagram
※1 経済産業省 2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題より
【参照サイト】Marjan van Aubel
【参照サイト】Dezeen:Marjan van Aubel creates colourful solar panel skylight for Dubai Expo
Edited by Tomoko Ito