ロンドンの街全体がゲームに。歩いて大気汚染を解消する「Beat the Street」

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イギリスの首都ロンドンでは、他の多くの大都市と同様に、交通渋滞や大気汚染が社会問題になっている。また、人々の運動不足も深刻だ。イギリス在住の16歳以上を対象とした調査によると、徒歩や自転車、スクーターといった、自身の運動となるような移動手段を月に2回以上取る人は、37%しかいないという。

ロンドン西部ハウンズローでは、地域の住民を巻き込みながら「車の使用を減らし、より人々が歩く」ための実験が行われた。「Beat the Street」と銘打たれたこの企画では、参加者一人ひとりが自分のカードをオンライン上で登録し、地区のあちこちに配置された機械でそのカードをスワイプするたびに、カード内にポイントが与えられる。ポイントは、子供であればおもちゃなどと交換可能だ。

おまけに、実際にその場に行ってみることで、自分の住んでいる地域について詳しく知ることができる。普段の生活にスタンプラリーのような楽しみを取り入れることで、ウォーキングしたりサイクリングしたりすることを促すのだ。同地区に住む11歳以下の子供たちは、学校の取り組みとしてこのBeat the Streetをプレイする。以下の動画はその様子である。

これには、人々が面白いと思えるような仕掛けで積極的な行動を促す、ゲーミフィケーションと呼ばれる手法が用いられている。この実験結果は、街全体をゲームにすることで、通学や通勤に際して車の使用よりも、ウォーキングやサイクリングを積極的に行う環境を作り出すことができる、ということを示している。

このほど発表されたカーディフ・メトロポリタン大学の研究者であるマーク・ハリス氏とダイアン・クロン氏の論文で、その具体的な成果が確認された。2019年9月18日から10月30日までの6週間の実験期間に、ハウンズロー地区の人口の9.6%に相当する2万8,219人が参加し、161箇所ある機械で合計63万8,697回のタップが記録され、のべ9万6,849マイル(約155,863 km)の移動が行われたのである。

街の渋滞・大気汚染の問題に対し、ロンドンでは以前からさまざまな対策が行われている。2003年には中心部への自動車の乗り入れが原則有料となる規制が始まった。この、いわゆる渋滞税の導入により、多くの人が「経済的にマイナスになるなら車を使わない」と考えるようになり、結果として中心部の交通量は減少している。2010年にはシェア自転車「ボリス・バイク」が導入され、交通インフラの充実化が図られた。

渋滞税が負担を課す政策であるのに対して、交通インフラ整備は負担を軽減する政策だ。しかし「Beat the Street」は、そのどちらでもない。まるでゲームのように、チャレンジと喜びを提供し、自発的な行動変容を促している。

増税には反対する市民もいるが、ゲーミフィケーションに反対する人はほとんどいない。任意であって、強制的なものではないからだ。

このロンドンでの取り組みは、ゲーミフィケーションがいかに社会を変化させるのに有効な手段であるかを証明したと言えるだろう。

【公式サイト】What is Beat the Street?
Edited by Kimika

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