車が来るまで青信号。ロンドンの「人」を中心にしたまちづくり

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近年、世界諸都市で「車離れ」が進んでいる。20世紀中頃に起きたモータリゼーションで推し進められた車中心の街路整備を見直し、徒歩や自転車での移動が簡単な「歩きやすい街(Walkable City)」を目指していく動きだ。

そんな中、ロンドン交通局は新たに、市内で歩行者が多い18の横断歩道について「車が来ない限りは歩行者用信号を青にしておく」取り組みを開始させると発表した。対象となる横断歩道のエリアは、駅やショッピングモール、学校といった歩行者の目的地への近接性や、歩行者量の多さ、そして信号機などに施されるシステムへの対応性といった指標を元に選定された。

2018年にはすでに、このうち5つの横断歩道で全く同じ取り組みを試験的に行っており、センサー等の必要な技術は検証と共に準備が進められてきた。2021年6月末までに18のすべての横断歩道で適用開始となる。

日常的に歩く距離を人々が増やしやすい仕組み作りは、健康増進に繋がる。同交通局のデータによれば、新型コロナのパンデミック以降、運動を目的に市内を歩く人が増加しており、現在では3分の1近いロンドン市民が通勤や通学の際に徒歩を選択するようになったという。また、2020年の調査では、市民の移動距離のうち、徒歩によって移動した距離の割合が35%から50%近くまで上昇したとするアンケート結果も出ている。

人々が歩くロンドン

また、車の使用量を削減することは大気汚染を和らげる。同交通局はまた、ロンドン内の自治区と協力し、学校周辺の居住エリアの自動車交通量を削減する政策も数多く進めている。毎日通学を行う児童たちにとって空気環境は重要であり、81%の親が政策を支持しているという。さらに、歩行者が増えると、街は活気に溢れていく。1階部分に店舗を入れる建物が需要と共に増えれば、自然とエリア内で人同士の交流が生まれる。

このようにメリットの多い「歩きやすい街」計画にとって、課題となるのは歩行者の安全性確保だ。同市でも2020年に45人の歩行者が車との接触事故で亡くなっている。今回の取り組みの開始後はモニタリング調査を継続し、必要に応じて措置を取っていくことが計画成功の鍵になるだろう。

ヨーロッパ有数の都市であるロンドンが歩行者優先の街づくりに大きく舵を切ったことは、このグローバルな流れをさらに促進するだろう。世界の都市がどのように姿を変えていくのか、今後も楽しみだ。

【参照サイト】Pedestrian priority introduced as part of London’s drive to be the world’s most walkable city
【参照サイト】Revealed: The huge change coming to pedestrian crossings in London
Edited by Kimika

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