大手レコード会社が集結。音楽業界で脱炭素に向かうイニシアチブ「Music Climate Pact」

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CDのパッケージごみや音楽制作に伴うCO2の排出など、実は地球環境への負荷が大きい音楽業界。オスロ大学の研究によると、アメリカで録音・音楽制作によって排出される温室効果ガスは、1977年には1億4千万キログラムだったが、2016年には2億~3億5千万キログラム以上にまで増えたと推定されている。 (※1)

音楽活動を地球環境に優しいものにしたり、音楽活動を通じて環境問題に警鐘を鳴らしたりするには、どうすればいいだろうか。

イギリスのロックバンド「Coldplay」が、2022年にクライメート・ポジティブなワールドツアーを開催することを発表するなど、ファンにサステナブルな体験を届けようと努力するミュージシャンがいるなか、ミュージシャンをサポートするレコード会社なども動き始めている。

インディーズの音楽活動支援を行うイギリスのNPO「Association of Independent Music(AIM)」と英国レコード産業連盟(BPI)は、2021年12月、音楽業界全体で気候変動対策を推進するためのグローバルプラットフォーム「Music Climate Pact」を立ち上げた。

すでにユニバーサル・ミュージック・グループ、ワーナー・ミュージック・グループ、ソニー・ミュージックグループなど約15の組織が署名した、同イニシアチブの内容はどのようなものだろうか。

まず、Music Climate Pactに参加した組織は2022年2月までに、SBT(Science Based Targets)の目標を設定すると宣言するコミットメントレターを提出するか、「Race to Zero」キャンペーンに参加しなければならない。

SBTとは、パリ協定が求める水準と整合した温室効果ガス削減目標であり、Race to Zeroは、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すことを呼びかける国際キャンペーンだ。つまり、いずれにしてもCO2排出量を大きく削減することが求められる。

また、Music Climate Pactに参加した組織は、ミュージシャンが環境問題について発信したり、音楽業界の環境負荷についてファンとオープンに話したりすることを、サポートしなければならない。業界が抱える課題と向き合いつつ、ミュージシャンを通じて多くの人に環境問題への関心を持ってもらうことが求められるのだ。

Music Climate Pactは、2022年6月までに100以上の組織に参加してもらうことを目指している。複数の大手レコード会社が参加するMusic Climate Pactだが、中小企業の参加も歓迎している。SBTにもRace to Zeroにも中小企業向けのコースが用意されており、AIMおよびBPIが温室効果ガス排出量の報告書の作成をサポートすることも可能だという。

ミュージシャンを発掘したり、作品をプロモーションしたりと、私たちが日常的に音楽に触れる機会を創出する音楽会社。そんな彼らがどのように環境問題に取り組み、情報を発信するのか、注目したい。

※1 How music listening affects the climate – Department of Musicology
【参照サイト】 Music Climate Pact

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