プラスチックの廃棄物が世界にあふれ、海の生態系に悪影響を与えていることや、地球温暖化を加速させていることは、今や広く認識されるところとなった。なかでもその量が多く問題となっているのは、パッケージに使われるプラスチックだ。
サステナビリティに関心がある人のなかには、プラスチックボトル入りの飲料の代わりに、紙のパッケージ入りの飲料を選ぶことで環境に配慮しようとする人もいるだろう。しかし、そんな一見環境にやさしいように見える紙素材のパッケージにも、隠れた問題点がある。
一般的な紙の飲料パッケージは、液体が染み出さないようにするため、プラスチック製の薄い膜でラミネートされている。そのため、リサイクルする際には、紙とそのプラスチックを完全に分離しなければならないのだ。このプロセスには特別な設備が必要で、コストもかかる。
この課題を解決しようと米のデザイン会社Pushan Panda社が開発したのが、紙とプラスチックを完全に分離できる飲料パッケージ「Bruk」だ。
Brukは、形や用途は既存の飲料パッケージとほとんど変わらない。しかし、中心に縦の点線が入っており、飲み物を飲み終わった後は外側の紙のパッケージを2つに割ることで、中のプラスチックパッケージと完全に分離することがでる。同社は、パッケージのリサイクルを推進するため、多くの人に直感的に、そして簡単に使ってもらえるよう、親しみやすくインクルーシブなデザインを目指したという。
資源の循環を作り出すためには、分離した後の紙とプラスチックがそれぞれ適切にリサイクルされる必要があるため、その点は引き続きリサイクルの仕組みを整えていく必要がある。たとえば、2020年度の日本の使用済み紙パック回収率は29.7%となっており、回収率の向上が課題となっていることがわかる(※1)。
しかし、製品が回収された後のリサイクルプロセスにも目を向けて製品をデザインしていかなければ、たとえ回収率を上げても、効率的に、低コストでリサイクルを行うことは難しい。
既存の牛乳パックのような複合素材は、私たちの生活の便利さを追求した結果生まれた、ある意味で優れたデザインなのかもしれない。しかし、その便利さが、再利用できない廃棄物の増加を招き、環境への負荷を増大させてしまっていることも事実だ。
我慢するのではなく、発想の転換やデザインのちょっとした変更を通して、楽しく問題を解決する。Brukのシンプルなソリューションから学べることは、多いのではないだろうか。
【参照サイト】PUSHAN PANDA(公式)