消費期限が切れてしまった、売れ残ってしまったといった廃棄からレストランなどでの食べ残しまで、まだ食べられたのに捨てられてしまう食品ロス。日本国内では、年間570万トンが廃棄されているとされ、その量は飢餓で苦しむ人へ送られる世界の食料援助量の1.4倍にあたる(※1)。
食品ロスの問題は日本にとどまらず、世界でも深刻だ。レストランなどでの食べ残しが社会問題化した中国では、2021年に「食べ残し禁止法」が成立。世界各地でどうやって食べ残しを減らすのかに頭を捻っている。
そんな中、IT業界世界最大手のGoogleが、社員食堂で従来より約2.5cm小さい深さの皿を使い始めたところ、食べ残しを最大7割削減できたとFast Companyが報じた(※2)。
世界56か国のオフィスで、従業員に毎日何十万食もを提供するグーグル(Google)。規定外野菜の調達、サプライチェーンの透明化など、環境への影響をより小さくするためのプロジェクト「Food for Good」に取り組んでいる。
しかし、「ちょっと多く取りすぎてしまった」「あまりおいしくない」など、食べる人の意識までコントロールすることは簡単ではない。そこでGoogleは、イリノイ大学の研究で明らかになったお皿のサイズと食べ残しとの関係に目をつけた。
イリノイ大学が学生寮で行った研究結果(※3)によると、丸皿からより表面積の小さい楕円形の皿に変えることで、丸皿では15.8%だった食べ残しの廃棄量が、楕円皿では11.8%に減少したという。
「Food for Good」の責任者のエミリー・マー氏はFast Companyの取材に対し、「小さな皿に変えたことで、無意識のうちに食べ物を30〜50%少なく取るようになりました。意識的にせよ、無意識にせよ、小さな行動の積み重ねが、実は持続可能な生活を送るために欠かせないのです」
と語っている。Googleは2025年までに社員 1 人当たりの生ごみ量を半分に減らし、最終的には生ごみの埋め立てゼロを目指している。
私たちの日常に置き換えてみると、食べ放題をイメージするとわかりやすい。ついつい欲張ってたくさん取りたくなる人間の気持ちではなく、お皿を変えるというちょっとした工夫(ナッジ)が環境負荷を減らすことにつながる。
「小さな取り組みが大きな成果」になると度々見聞きするが、小さくとも細く長く続けていくことこそ、環境問題解決への一番の近道なのかもしれない。
※1 食品ロスについて知る・学ぶ|消費者庁
※2Google says its reduced food waste just by using different bowls
※3 Impact of plate shape and size on individual food waste in a university dining hall
【関連ページ】ナッジ(行動経済学)とは・意味
【関連記事】中国で「食べ残し禁止法」が可決。食品ロス削減へ
【参照サイト】Two new pledges to reduce food loss and waste at Google
【参照サイト】Animal-free Meat Biofabrication