オランダの大手スーパー「アルバートハイン」に学ぶ、5つのサステナブルアイデア

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オランダ国内でスーパーマーケットシェアの上位35%を占めているAlbert Heijn(アルバートハイン)は、オランダにいると最もよく目にするスーパーマーケットだ。

そんなAlbert Heijnは、オーガニックフードの販売はもちろん、プラスチック汚染やフードロスなどの環境問題に全面的に取り組んでおり、2017年から3年連続で「オランダで最もサステナブルなスーパーマーケット」と表彰されている。

今回は、Albert Heijnが行なっているサステナブルな取り組みを5つのポイントに分けてご紹介したい。

01. 通常の商品とほぼ同数のオーガニック(BIO)商品

Albert Heijnをはじめとして、オランダのスーパーではオーガニック商品が通常の商品とほとんど同じだけの量並べられている。そして、価格もほとんど変わらない。日本ではオーガニック商品を購入するのは値段やアクセスからハードルが高いように感じられるが、オランダでは一般的なスーパーでオーガニック商品が浸透している。

このような幅広い選択肢があることは、地球環境にも消費者の体にもやさしいオーガニック商品を選ぶ機会が増えるのはもちろんのこと、日々の購買行動の中でオーガニック商品への認知拡大にも貢献している。

左側(緑のプライスカード)がオーガニック商品、右側(その他)が通常商品。

左側(緑のプライスカード)がオーガニック商品、右側(その他)が通常商品。

02. ドライミスト実証実験からプラスチックフリーを推進

Albert Heijnでは、プラスチックを減らす取り組みが急ピッチで進められている。会社としては2025年までに2000万キロのパッケージ素材を減らし、さらにすべてのパッケージをリサイクルするという目標を掲げているのだ。

Albert Heijnが注目されるべきポイントは、上記の目標を達成するために、あらゆる検証を行い、その検証に基づいて店舗に導入していくプロセスを着実に踏んでいる点だ。

たとえば、首都アムステルダムの近くの町ホーフトドルプの店舗では、2018年に果物や野菜のプラスチック包装をなくし、商品棚の上にドライミストを導入する実証を行った。そして顧客満足度や、食品の鮮度をプラスチック包装なしで十分に維持できるかを検証。その結果、顧客満足度もバナナや唐辛子、人参などに対しては品質上問題ないことが明らかになり、2019年には導入を全国150店舗にまで展開させることに成功した。

アルバートハイン

03. オリジナル商品の変革も徹底

Albert Heijnでは自社のオリジナル商品も多く取り揃えている。そして、商品自体だけでなくその梱包方法を環境と健康に配慮したものに転換していく取り組みも行っている。

果物やチーズを梱包するプラスチックの蓋をなくしたり(50万キロのプラスチック減)、クッキーの外袋の中のプラスチックケースをなくすために割れにくいクッキーを作ったり(1.4万キロのプラスチック減)、洗剤の容器をより小さなものにするためにより濃縮した洗剤を開発したり(8.9万キロのパッケージ減)と、プラスチックの総使用料を着実に減らしている。

アルバートハインのオリジナル商品

04. AIによるダイナミックプライシングでフードロス削減へ

ダイナミックプライシングという言葉を聞いたことはあるだろうか。ダイナミックプライシングとは、AI(人工知能)を使って需給予測をして商品価格を設定するというシステムだ。航空券やホテルの部屋の価格設定でよく見かけるが、最近ではコンサートや、ユニバーサルスタジオジャパンのチケットに導入され始めたことで、日本でも注目されはじめている。

AIやドローンなど最新技術のビジネス活用が進むオランダでは、Albert Heijnにダイナミックプライシングを導入してフードロス削減に繋げる取り組みを2019年5月から一部店舗でスタートさせている。

ダイナミックプライシング

ここでは、賞味期限に近ければ近いほど安く売り、売れ残りをなくしていくという仕組みがある。以前IDEASFORGOODでご紹介したイスラエルのスタートアップ会社Wastelessとの共同で開発したAIシステムで、賞味期限だけでなく、気候や立地、在庫状況、過去の販売履歴、などのさまざまな情報を考慮して価格を決め、電子値札に通常の価格と割引後の価格の2パターンの価格を表示させるのだ。

テクノロジーをうまく活用することで、適正な価格判断ができずに売れ残りを出してしまうという失敗を限りなくゼロに近づけることができる。

スーパーの廃棄物削減

05. 社会的企業とのパートナーシップ連携

Albert Heijnは、他社とのパートナーシップも盛んだ。たとえば、以前IDEAS FOR GOODの記事でも紹介したフードレスキューアプリの Too Good To Goや、廃棄直前の食材を使ってプロが調理するレストランInstockとの連携によりフードロスを極力出さないように努力している。また、ローカルな生産者を訪問し、直接契約を行うことで、食のトランスペアレンシー(透明化)確保につなげている。

大手企業が先導して取り組むことが重要

オランダがサステナビリティという面で世界をリードしている要因の一つとして、このような国を代表する大企業が率先してサステナブルな取り組みをスタートしていることが挙げられる。

環境問題に立ち向かっていくためには、事業を根幹から見直し、前例のない新しい取り組みを行う必要性が出てくるだろう。コストをかけて実証実験ができる大企業だからこそ、考えられうるアイデアに次々とチャレンジしていこう、というAlbert Heijnの姿勢は、サステナブルなスーパーの好例だ。

私たちも、Albert Heijnが作り出した前例や経営姿勢から学べることがあるはずだ。

【関連記事】食料廃棄をなくす。消費期限に応じて価格をリアルタイムに変えるAIテクノロジー
【参照サイト】Albert Heijn
【参照サイト】Market share of the leading companies in food retail in the Netherlands in 2018

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