仕事中に「昼寝がしたい」と思ったことはないだろうか。
ちょっとした昼寝が、働く人のパフォーマンスを向上させることを示す研究はいくつかある。
たとえば、1990年から1997年にかけて米航空宇宙局(NASA)の疲労対策プログラムを指揮したマーク・ローズカインド氏の研究によると、26分の昼寝が、パイロットのメンタルパフォーマンスを34%向上させたという(※1)。また、ペンシルベニア大学の研究によると、24分の昼寝が医療従事者のメンタルパフォーマンスを向上させたそうだ(※1)。
そうは言っても、人々が忙しく働く職場で、自分だけが堂々と昼寝をする勇気はなかなか出ないだろう。「それなら、会社が昼寝をする権利を公式に認めればいいのではないか」と考えたのが、睡眠グッズを製造販売するインドの企業Wakefitだ。
Wakefitは2022年5月、14:00から14:30までを従業員の昼寝タイムにすると、正式に発表した。この時間帯は、誰にも昼寝を邪魔されないよう、Googleカレンダーの時間枠をブロックするという。「昼寝は怠惰さの表れではなく、セラピーである」というのが、同社の考えだ。
同社のYouTube動画によると、近年普及したテレワークが、昼寝の大切さに気づくきっかけになったという。自宅で働いているときに昼寝を取り入れると、いつもより仕事が捗ったり、健康的な生活を送れたりするという効果が表れた。
ところが、出勤が再開されて会社で昼寝をすると、同僚に寝顔の写真を撮られたり、顔に落書きされたり、上司に注意されたりして、自分が悪いことをしているような気持ちになる。「会社での昼寝をタブーにするべきではない」という強い想いから、Wakefitは行動を起こした。
同社は「Do Se Dhai(14:00から14:30まで)」という合言葉を掲げ、他の組織も昼寝のムーブメントに加わるよう呼びかけている。動画に出演しているサティッシュ・レイ氏は有名なコメディアンで、動画は1日で約30万回も視聴されている。動きは徐々に広まっていくかもしれない。
「〇〇では昼寝の文化が定着している」「〇〇人はあまり働かない」といった情報をときどき見かけるが、このような動画を見ると、国は違えど人々は似たような葛藤を抱えながら働いているのではないかと感じる。日本でも寝具メーカーなどが、昼寝の習慣を堂々と提案してくれると嬉しい。
※1 Napping(Michigan Department of Education)
【参照サイト】Office Naptime | Wakefit
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