フィンランド発、従業員に静けさと幸せをもたらす「Framery」の防音ルーム

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生産性の向上は人生を充実させる鍵だ。世の中には作業効率を上げるためのさまざまなテクニックや方法論が溢れているが、多くの人が忘れがちな要素がある。それは、作業中に耳に入ってくる雑音だ。

今、耳を澄ますとどんな音が聴こえるだろうか。あなたが比較的静かな空間にいても、人の話し声、換気扇の音、車の走る音くらいは聴こえるはずだ。カリフォルニア大学の研究によると、小さな物音によって一度集中が途切れた後、人間の脳が再び同じ集中状態に戻るには約20分かかるという。一般的なオフィス環境で起こるこの悩みを解決するプロダクトが、今フィンランドから世界中へと広がっている。

同国タンペレ市で誕生し、近年急成長をとげているFramery社が開発したのは、オフィス家具としての防音室だ。スタイリッシュで機能的なデザインの防音室は、オフィスでの従業員の生産性を高める。

Frameryの防音家具

Image via Framery

主要商品はサイズに応じて3種類。「Framery O」は1人用で、電話やビデオ通話を含め、あらゆる個人の仕事を捗らせる。「Framery Q」は1~4人用で、少人数の商談や面接など静かな場所の必要なシーンに適している。最も大きい「Framery 2Q」は約6人まで収容できるので、プレゼンやチームミーティングなど、さらに多目的の使用が可能だ。

筆者も実際にFramery Qの中へ入ってみたことがある。間近で人が話しているのが外に見えても、中は今まで感じたことのない静寂だった。自然と心が落ち着いていき、目の前の作業に集中できる感覚を得て、改めて周囲の音がいかに集中力を削いでいるのかを体験できた。

また、同社は特殊な技術改良を重ねており、風の音も聞こえない静寂を再現しつつも、内部の空気の質と流れは保たれる設計を実現。内装や色にもバリエーションがあり、幅広いニーズに答えている。テスラやマイクロソフトなどの企業でも採用されているようだ。

Frameryの防音家具

Image via Framery

2010年の創業から、Frameryのあり方は少しずつ変わってきた。創業の背景には、現CEOであるSamu Hällfors氏らが当時働いていたソフトウェアの会社で、上司の絶え間ない電話での話し声に耐えきれなくなったことがある。同氏はその後会社をやめ、防音性能のプロを志した。

始めは、開かれたオフィス環境にとって貴重な「静寂」を売るビジネスだった。しかし、導入した多くの企業からは「従業員の生産性と共にモチベーションが高まり、オフィスに活気が生まれました。」というフィードバックを得たという。仕事場に「静寂」を売るビジネスは、結果的に「幸せ」を売ることにつながっていたわけだ。イギリス・ウォーリック大学の研究では、幸せを感じていると回答した人が、そうでない人よりも仕事の生産性が12%高くなるという結果が出ており、生産性と幸福度には確かな関係がある。

経営者の視点に立つと、Frameryのもう一つのメリットが見えてくる。それは余分なスペースを取らないことだ。インターネットの発達や、働き方改革が徐々に進んできた現代のオフィスでは、区切られた空間の収容人数とニーズのミスマッチが、認識されづらいがじわじわと問題化している。それは、一人で行うビデオ会議や少人数で行うミーティングをするときに会議室が大きすぎたり、逆に数が足りなかったりといった無駄である。

Frameryの防音室は、従業員の生産性を上げて人件費を節約できるだけでなく、スペースを有効活用できるという視点からも、長期的に見て大幅な経費削減となりうる。

「生産性」、「働き方」、「社員の幸せ」。現代の日本企業に求められるこれらの問題を解く鍵は、Frameryの防音室のような、働く空間の些細な改善にも隠されているのかもしれない。静寂に重きを置くフィンランド文化から生まれたアイデア商品は、また一つ大切な事を教えてくれた。

【参照サイト】Framery
【参照サイト】This Is Nuts: It Takes Nearly 30 Minutes to Refocus After You Get Distracted
【参照サイト】New study shows we work harder when we are happy

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