バリ発、世界中のデジタルノマドが集まるコワーキングスペース「Hubud」

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以前に比べて、居場所を自由に選択して働ける機会が増えてきた。米国の63%の企業はリモートワークで働く正社員を雇用しており、日本でもテレワーク導入企業が増加傾向にある。一方で、リモートワーカーが苦労することの第1位は仕事とプライベートの切り替え、第2位は孤独感、そして第3位は他の人とのコミュニケーションや連携コストだという。

そんな中、近年「デジタルノマド」という言葉を耳にするようになった。デジタルノマドとは好きな場所で、あるいは旅をしながら自分のPCで仕事をする人を指す。Wi-Fiさえあれば仕事ができるようなライターやエンジニアがノマドワーカーに多く、IDEAS FOR GOODでも、旅をしながら寄稿するライターも在籍する。

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Image via ShutterStock

インドネシア・バリ島は、誰もがうらやむリゾートというイメージがある一方で、ノマドワーカーの聖地と呼ばれる顔も持ち、世界各地から場所を問わず仕事ができる職種を持つ人が集まる。今回は、バリ島中腹に位置し、夕日に照らされるライスフィールド(棚田)が有名な観光地ウブドのコワーキングスペース「フブド(Hubud)」のCEOであるMichael Craig(以下、マイケル)へのインタビューを通し、フブドの魅力を紹介する。

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このお洒落なコワーキングスペースは竹やリサイクルされたウリンという木材で作られていて、15の会議室と6つの小さいミーティングルームがある。最近フブドはバリ・チャングーにあるコワーキングスペース「ドウジョウ(Dojo)」と合併したことで、それぞれのコワーキングスペース利用者同士の交流も活発化し、さらなるバリのノマドワーカーの聖地化に貢献している。

コワーキングスペースというと場所やWi-Fiの提供に終始しがちだが、まずはHubudが世界中のデジタルノマドを引き付ける理由を紹介しよう。

01.コミュニティを大事にするコワーキングスペース

フブドの最も大きな特徴はコミュニティ内のつながりの強さだ。フブド利用の際に書くアンケートには、自分の強みやスキルを細かく記入する欄や、そのスキルを周囲に提供する意思があるかを問う項目がある。

希望者は他のフブド利用者から質問を受けられ、アドバイスを提供できる人として壁に張り出されていた。利用者同士が助け合えるような制度が取られているのだ。

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スペース内に張り出されていた写真

フリーランサーとして活動する利用者は、フブドの利用者同士で仕事を依頼し合って事業化するケースもよくあることだという。

02.フブドで開催されるセミナーでは世界中のユーザーが講師に

質問できるフブド利用者の写真の横には、カレンダーがある。それぞれ指定した時間に、フブド利用者によるセミナーが開かれている。

筆者が取材した日に開催されていたのはマーケティング講座だ。この場にはフブド利用者でウクライナ人のマーケティング担当者を講師とし、世界中からさまざまな業種の人が参加していた。マーケティングを学びたい若年層のノマドワーカーのほかに、興味本位で来てみたというエンジニアなど、参加者の属性はさまざま。

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マーケティング講座の様子

自分の業務についての相談や異業種の人から見たマーケティングに対する意見など議論が活発に行われており、彼らの国それぞれのマーケティングの考え方を共有しあう場所になっていた。ここにいる全員がフブド利用者であり、先生であり生徒であるという学び合う対等な関係性が築かれている。

03.普段とは違う環境で仕事できる

フブド周辺にはモンキーフォレストという観光客に有名な猿山があり、緑が多い。仕事中ふと顔を上げると電線を伝って歩くサルやフブド敷地内の中庭に遊びにきているサルを見かけることもある。そんなことはノマドワーカーたちにとっては日常茶飯事のようで、何食わぬ顔で集中して仕事をしている。

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電線を歩くサル

田園も覗けるのどかな環境だがWi-Fiのスピードの速さには定評があり、Skype用のブースやカフェも完備しているなど、快適に仕事をすることができる。平日は24時間、週末は9時から深夜まで利用可能だ。宿泊施設も併設しているため、フブドで出会った世界中の仲間と親交を深めることもできる。

最後に、ドウジョウ兼フブドのCEOマイケルにコワーキングスペースで得られる成長の機会について伺うことができた。

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HubudのCEOマイケル氏

さまざまなライフスタイルが選べる中で、どう選択するかは自分次第

能力のある人が集まれば世界を変えられると思い、ドウジョウを立ち上げました。日本語の「道場」にちなんだ名前で、人が集まって切磋琢磨し合う場所になってほしいという思いをこめました。ドウジョウの運営の中で、フブドの運営を任される話が出て、引き受けることになりました。

テクノロジーの進歩によって、Wi-Fiとパソコン一台で生活できるようになり、快適なライフスタイルのあり方が変容してきています。数十年前は考えられなかった世界ですよね。さまざまなライフスタイルが選べる中で、どう選択するかは自分次第です。コワーキングスペースの集客においては、なにか特別な仕掛けをしているわけではないのですが、ここで働くことを選択した人が自然と集まってきています。

ここがバリだからこそ、世界中の人が集まるので、アイデアを共有しあうことにより、社会の変革を創り出す挑戦が生み出されています。優れたコミュニティを作ることで、コラボレーションを生み出し、社会にインパクトをもたらします。

今後はここでさらに多くの社会起業家を生めるように、企業やNGO、自治体と組めるような働きかけをしていきたいです。

Hubud CEO ミカエル氏

Hubud CEO ミカエル氏

インタビュー後記

口コミサイトを見ていると、「フブドに行くためにバリに行きたい」という声があった。その理由はただリゾートで仕事ができるなんて楽しそう、という表面上の想いではなく、こうした世界中の知見に触れられるコワーキングスペースを使うこと自己研鑽に繋がるからなのかもしれない。

ここに集まるユーザーとのコミュニケーションや勉強会に出席することによって、世界の中の自分の市場価値を知ることができる。さらに、自分の仕事に繋げられる場がここにはあった。

これまで常識とされてきた固定オフィスで仕事をする働き方も一つのライフスタイルだ。一方で働き方が多様化している現在、キャリアアップの仕方も多様化していきそうだ。

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