歴史のある街並みやグルメなどが魅力的であり、日本からも多くの旅行者が訪れるイタリア。その国が現在、過去70年間で最悪の干ばつに見舞われていることをご存じだろうか。
イタリア政府は7月4日、北部のポー平原(Po Valley)で、ここ数週にわたって干ばつが深刻化しているのを受け、北部5州で非常事態宣言を発出し、緊急基金を創設したと発表した。国内最大の農業組合「コルディレッティ(Coldiretti)」によると、全国の農業生産の30%以上と、農業地帯であるポー平原の農地の半分が干ばつの影響を受ける恐れがあるという。
そのような状況下で、イタリア北部にある小さな町カステナーソ(Castenaso)では、地元の理容室・美容師に水の使用量を大幅に削減させるという条例(※)ができたことが話題となっている。というのも、その具体的な指針には「洗髪を2回から1回にすること」とあるのだ。
町内には、10軒の美容院や理容室があり、規則を破った店には最高で500ユーロの罰金が科せられるという。危機的な干ばつに対して、このような思い切った斬新な対策を取っているのは、現時点ではこの町だけである。
自治体が発行したハンドブックによると、1分間に13リットルの水が蛇口から流れ、髪を2回すすぐためには、少なくともおよそ20リットルの水が必要だという。カルロ・グベッリーニ市長は、イタリアの新聞紙であるCorriere della Seraの取材に対し、「顧客1人あたりに使う水の量を数倍にすると、1日に数千リットルになる」と述べている。
つまり、条例によって美容室での洗髪が2回から1回に減らされることで、カステナーソでは数千リットルもの水が節水できる可能性があるのだ。
この条例に対しては、ヘアケアの商品によって2回以上のすすぎが必要な場合もあり、現実的ではないという批判の声もあるという。それでも、「シャンプーの回数を減らす」だけで数千リットルもの節水につながることを人々に示したことは、意味あることではないだろうか。
日本においても、美容室や理容室でのシャンプーの回数が必要以上に多いと感じている人もいるかもしれない。一見ささいなものに思われがちな日々の節水や節電も、実は一個人、一企業、一店舗……それぞれが実践すれば、社会全体としてはそのインパクトは大きなものになる。
こまめに節水、節電する。プラスチックをできるだけ使わない。まずは、あなたの目の前の出来ることからはじめてみてはどうだろうか。
※ この規制は、9月下旬まで実施されることになっている。
【参照サイト】Italian town orders local hairdressers to wash customers’ hair only once
【参照サイト】イタリア、干ばつで北部に非常事態宣言
【参照サイト】コルディレッティ(Coldiretti)
Edited by Tomoko Ito