オランダの「家で見ても面白くない映画」は、なぜ移住者を魅了するのか

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私たちは、自分自身の住んでいる街の歴史や魅力について、どこまで深く知っているだろうか。

オランダの首都、アムステルダムの自治体の一部であるスローテルダイクは近年、急速な開発により、オフィス街としてだけではなく、生活圏とビジネス圏、さらには娯楽を楽しむ場所が一体となった都市へと変容を遂げている。

「多様性と創造性」を目標として、オフィス複合施設はモダンなワークスペースや住宅に、空き地は緑豊かな共同施設へと生まれ変わりつつあるのだ。この変化により、スローテルダイクを居住地に選択する人が増えた。しかし、それはすなわち、この街に馴染みのない新しい居住者が増えたということだ。

そこでスローテルダイクは、居住者にもっと街の歴史や魅力を知ってもらおうと、アムステルダム市とデベロッパー、不動産所有者、地元雇用者の協力を借りて、ウォーキング映画『Toerd’amour』を制作した。

ウォーキング映画

Image via Toerd’amour

この映画は、映画館や自宅のソファで鑑賞するものではなく、屋外でのアクティブなマルチメディア体験として鑑賞する約40分の映画だ。出発点であるスローテルダイク駅の正面玄関前で専用のQRコードをスキャンすると、自分自身が主役になることができる。次に脚本を選び、映画の一部をスキャンすることで、アクションに参加できる仕組みとなっている。

映画の中では、案内人であるグレースとともに、スローテルダイクのホットスポットや美しい自然保護区を巡りながら、実際に街に住んでいる魅力的なアーティストやミュージシャン、起業家など、さまざまな人に出会うことができる。

街を彩る多様な人々と会話をし、スローテルダイクの過去から現在までの発展の物語と魅力的なスポットを知ることは、街に愛着が湧き、そこで生きている一員であるとの意識を高めるだろう。

想像してみてほしい。自分の住んでいる街について尋ねられたとき、誰もが自信を持って、その場所の歴史や魅力を語れる街の姿を。とても美しい光景ではないだろうか。

都市開発は、多くの人を呼び込み、経済を発展させることにつながるが、その街の持つ歴史や魅力、土地の風土を考慮していない開発であれば、文化の発展にはつながらないだろう。

時代に合った変化を受け入れながらも、誰もが自分自身の住む街について深く理解し、愛着を持って生活することができれば、経済と文化の両面で、より良い発展を遂げられるはずだ。

今後、スローテルダイクのような取り組みがあらゆる都市に広がり、気軽かつ楽しい方法で、自分自身の住む街を知るきっかけが増えていってほしい。

【参照サイト】 Toerd’amour

Edited by Erika Tomiyama

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