コールセンターに問い合わせの電話をしたら、「少々お待ちください」の声と共に流れる保留音。忙しい時間帯なのか、なかなか出てこないオペレーター。単調な保留音を聞くともなく聞きながら、受話器を片手に何もできずにしばらく待つ───きっと誰もが、そんな経験をしたことがあるはずだ。
そんな退屈な待ち時間を音楽フェスに昇華させる斬新な取り組みが、南米・エクアドルで行われた。「ON HOLD FES」と題されたその取り組みは、コールセンターの保留音に若手アーティストの曲を起用するというもの。同企画は、大手飲料ブランドのペプシによるもので、企画に賛同した大手ピザチェーン・ピザハットや航空会社・アビアンカ航空などのコールセンターに電話をかけると、若手アーティストの曲が保留音として流れてくる。
ペプシによると、エクアドルの国民が保留音を聴いている時間は、1人あたり毎月約92分にも上るという。世の中には、自分たちの楽曲を広めたいと願う若手アーティストが数多く存在する。そこの2点に着目したペプシは、保留音が流れる時間を若手アーティストのためのステージにすることで、ただの退屈な待ち時間を、電話の発信者とアーティスト双方にとって価値のある時間に変えたのだ。
発信者は、スマートフォンのキーパッドを使用することで曲のジャンルを選択したり、別の曲を聴いたりすることができるほか、気に入った曲のSpotifyリンクを手に入れることもできるという。そうすることで、気に入った曲は音楽配信サービスのSpotify上でも聴くことができるようになる。
ON HOLD FESには、86組のアーティストの楽曲が使用された。総再生時間は632時間にも上り、Spotify上でのアーティストたちのフォロワー数は累計で1万2,000人増加したという。これを受けて、ペプシはON HOLD FESを「世界で最も聴かれた若手アーティストの音楽フェス」だとしている。
楽しい時間を過ごしているときには、時間が過ぎるのが速く感じられる。コールセンターでの待ち時間も、魅力的な音楽を聴くことで、今までより短く感じられるかもしれない。
待ち時間の長さにイライラしているのとそうでないのとでは、コールセンターのオペレーターに対する態度も、自然と違ってくるだろう。ON HOLD FESの取り組みは、発信者とアーティストに加え、電話の対応を行うオペレーターにとってもポジティブな効果をもたらす、三方よしの取り組みだと言えそうだ。
【参照サイト】 Pepsi – On-Hold Fest
Edited by Kimika