デンマークのファッションブランドが、購入者の「転売」を支援する理由

Browse By

たまたま見つけて気に入った服。買ったときはとても良いと思ったのに、いつの間にか着なくなり、クローゼットの隅に押しやっている……あなたの部屋のクローゼットにも、そんな着用せずに眠らせたままの服があるのではないだろうか。

環境省のデータによると、日本で年間一人あたり、購入した服の枚数が平均約18枚であるのに対して、手放す服は約12枚。一年間一度も着用されない服は約25枚と、ほとんどの服が短いサイクルで一生を終えてしまっている(※1)。近年、ファッション産業が環境破壊に最も有害な産業のひとつであると言及されている理由は、商品が生み出される生産背景だけの問題ではなく、私たち消費者のファッションとの向き合い方も大きく関わっているのだ。

この「衣服が簡単に捨てられてごみになってしまう」問題の解決を目指し立ち上がったのが、デンマークのファッションブランド、Samsøe Samsøeだ。2022年5月3日にリリースされた同社のサービスは、衣服にQRコードがプリントされた「リセールタグ」をつけ、衣服の購入者が再販できるようにするものである。このリセールタグを利用することで、服を購入した人が、服を着なくなったとき、簡単に次の購入者に再販できることを目指している。

リセールタグ

Image via Uncle Grey agency

リセールタグは、InstagramやFacebookのマーケットプレイスと連携しており、タグのQRコードを読み込むとその商品の画像、サイズ、 色、素材などの情報が、販売プラットフォームに自動で紐付くようになっている。あとは情報をチェックし値段を入力するだけで、プラットフォーム上に商品が出品される仕組みだ。

また、それぞれのリセールタグには再販を促進するための少額の広告費用が含まれている。販売者の居住地に応じて、地元密着型で自動的に潜在顧客のもとに商品の広告が流れるようになっているのだ。

リセールタグ

Image via Uncle Grey agency

現代において衣服を再販するプラットフォームは多く存在するが、そこには再販する際の手間が発生する。服の写真を撮ったり、サイズ表記などの説明を追記したり、広告を出したりといったことである。リセールタグの仕組みを利用すれば、本来の購入者が服を再販する際の手間を省き、その服を求める人へ気軽に再販することが出来るのだ。

リセールタグを共同で開発したマーケティング会社Uncle Greyの、戦略責任者Lars Samuelsen氏とクリエイティブ責任者のUncle Grey氏はContagiousにこう語っている。「リセールタグはファッション産業で見過ごされがちな消費者による廃棄問題という大きな問題を解決する。現代では、クローゼットの中でたんすの肥やしになるまでに、ほとんど着用する機会のない服がたくさんある」

またSamsøe SamsøeのCEOのPeter SextusはMEDIA SHOTZにて「商品のライフサイクルまで考慮することは、責任あるブランドとしての核の部分となる。リセールタグはその循環を創るのに不可欠なサービスだ」と述べている。

リセールタグ

Image via Uncle Grey agency

リセールタグはブランドや衣服の価値を下げるのではなく、むしろ商品のライフサイクルに責任を持ち、サステナブルな消費行動を啓発する企業という社会的価値の向上につながる。

同社だけでなく、ファッション業界で廃棄を減らすムーブメントはやっと、盛り上がりをみせている。アメリカのアパレル企業、THREDUPのレポート(※2)によると何らかのリセールサービスをするブランドは2020年から2022年で275%も増加している。例えば、高級ブランドも消費者の再販を促している。Oscar De La Rentaでは、消費者が同ブランドのサイトで使わなくなった商品を再販でき、購入されれば現金かお店で使えるクーポンに換金される。英国のファッションブランドAlexander McQueenは着用していない服をお店に返品すると、お店で使えるクーポンに換金する仕組みを採用している。

日本でもメルカリなどのフリマサービスが一般的になってきており、このようなサービスが増えることで消費者サイドの衣服廃棄を減らすことができる。しかし、まずは私たち消費者が、衣服との向き合い方を見つめ直す必要もあるだろう。再販できるからといって不要な服をやみくもに買うのではなく、本当に大切にできる服か、購入する際に一度立ち止まって考えてみたい。

それでも流行や趣向、サイズの変化で残念ながら手放すこともあるだろう。そうなった際に再販サービスを使って新しい持ち主に届ける。みんなが衣服を大切にでき、必要な人に届ける文化が一般化すれば、ファッション産業が「地球を汚染する業界」というレッテルから脱却する日も遠くないかもしれない。

※1 SUSTAINABLE FASHION(環境省)
※2 2022 RESALE REPORT(THREDUP)

【参照サイト】ADVERTISING Samsøe Samsøe | The Resell Tag(Uncle Grey)
【参照サイト】Fashion label stiches free Facebook ads into clothes to promote resale(CONTAGIOUS)
【参照サイト】Samsøe Samsøe launches Resell Tag to tackle $500bn fashion waste issue(MEDIA SHOTZ)

Edited by Yuka Kihara

FacebookTwitter