2022年11月、世界の総人口が80億人を突破したことが、国連の「World Population Prospects 2022(世界人口推計2022年版)」で明らかになった。
増え続ける人口に、減る地球の資源。よくわからないのに、漠然と不安になる。そんな状況をなんとかしたいと考えたときに大切なのが、まずはじっくり事実に向き合うことだ。ここでは、世界経済フォーラムがまとめた世界人口に関する5つの事実をご紹介する。
(以下、世界経済フォーラムが運営するアジェンダページの「世界人口が80億人を突破した今、知っておくべき5つの事実」の全文掲載)
1. 機会を平等に提供する社会の実現がより重要な課題に
世界人口の増加は人類が進歩してきたことの証です。世界のGDPは成長し、平均寿命は延び、平等性は向上していますが、それらの恩恵が均等に分配されているとは言い難い状況が続いています。
Young Global Leaders Alumni Community(ヤング・グローバル・リーダーズ・アルムナイ・コミュニティ)のジョージ・ピルゴス氏は、すべての人に機会を平等に提供する社会の実現に向けて模索を続けています。その重要な要素となるのは、公正な労働基準、女性と女児への投資、研究における多様性、国連の持続可能な開発目標の指導原則であると同氏は考えています。
ザ・ボディ・エージェンシーの創設者であるケイト・ロバーツ氏は、女性の機会創出に向けた投資を解決策の一つに挙げています。
「女性に投資することで、女性は学校に通い、仕事を得て、家族を養いエンパワーさせることができるようになります。つまり、極度の貧困の連鎖を断ち切ることにつながります。女性と女児がリプロダクティブ・ヘルス関連の製品とサービス、そして教育にアクセスできるようにすることが重要なのです」。
— ケイト・ロバーツ(ザ・ボディ・エージェンシー創設者)
チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団のエグゼクティブ・ディレクターであるソニア・メディナ氏は、気候危機と食料不安のような危機の複合化が世界中で不平等を悪化させ、子どもに絶えず脅威を与え続けていると指摘しています。そのため、複数の問題に対して相互に関連性のある取り組みが必要なのです。食料危機対策の場合、気候レジリエンス(強靭性)の強化と栄養改善に対し、同時に投資することが求められます。それらの課題を解決する上で有効なのは、環境再生型農業であるとメディナ氏は主張しています。
世界の80億の人々すべてに機会を平等に提供する社会を実現するための解決策について、詳しくはこちら。
2. 世界人口は1803年以降、爆発的に増加し80億人に
これまでの歴史を振り返ってみると、世界人口が10億増加するのに要した期間は次第に短くなってきています。どのように推移して80億人に達したのかを下のグラフが示しています。
世界人口は17世紀、新技術と新農法の登場に伴い急激に増加し始めました。 Image: Our World in Data
グラフが示すように、世界人口は1803年になってようやく最初の節目である10億人に達しました。その大きな要因となったのは、1700年代に始まった第二次産業革命による多くの技術進歩です。
その後、出生率の上昇や医療と農業の継続的な発展により、世界人口は爆発的に増加しました。しかし、人口動態の変化や出生率の低下により、ここしばらくは世界の人口増加率は鈍化しています。
世界人口は1803年に最初の大台である10億人に達しました。 Image: Our World in Data
世界人口が80億人に達するまでの推移について、詳しくはこちら。
3. 世界人口の約半分は7つの国に
2015年の時点では、世界人口の約半分が6つの国に集中していました。しかし、最近になってその他の国で人口が増加した結果、現在は世界人口の半分弱が7つの国に住んでいるという状況に変化しました。その7つの国のうち、上位4つは以下とおりです。
- 中国──14億2600万人
- インド──14億1,200万人
- 米国──3億3,700万人
- インドネシア──2億7,500万人
残る3つの国については、こちら。
4. 2030年に、世界で最も人口が多くなるのはインド
国連が公表した「世界人口推計2022年版」によると、インドの人口は2022年の時点で14億1,700万人ですが、2030年には15億1,500万人にまで増加し、世界で最も人口が多い国になると予測されています。
現在、世界最多の人口を抱えている国は中国で、2位につけるインドをわずかに上回っています。この2つの国は、今後もその他の国に比べて圧倒的な人口規模を維持すると見込まれています。今後10年の間に、新たに人口が3億6,000万人を突破する国は現れないとみられています。
インドは10年後に、中国を抜いて世界で最も人口が多い国になる見通しです。 Image: United Nations
2030年以降に予測されるその他の大きな変化として、世界人口全体に占める65歳以上の人口の割合が今世紀末まで上昇し続ける一方で、25歳以下の人口の割合は減少していくことが挙げられます。
世界における1950年と2050年の年齢別人口の比較。 Image: UN World Population Prospects
今後予測される世界人口の推移について、詳しくはこちらをご覧ください。
5. 2100年の世界人口の見通し
2100年の世界人口については、さまざまな予測があります。国連の予測では109億人に達するとのことですが、ワシントン大学の研究者は異なる予測をしており、63億人から88億人になるだろうと述べています。
つまり、世界人口は現在より少なくなる可能性があるとの見方を示しているのです。
来世紀を迎えるころ、世界人口は増加しているのでしょうか、それとも減少しているのでしょうか。専門家の間では意見が別れています。 Image: Statista
その研究の詳細は「ランセット」誌で公表されていますが、ベースシナリオによると、世界人口は2064年に97億人でピークを迎えるとのことです。
2100年には世界人口はどのようになっているのでしょうか。その他の予測についてはこちら。
著者:Tom Crowfoot
※ この記事は著者の意見を反映したものであり、世界経済フォーラムの主張によるものではありません。