ノルウェーの食品ロス対策とは?現地在住者が語る、ゼロウェイストな暮らしのヒント

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ごみや食品ロス課題が多い現代。しかし世界は、それを解決するためのアイデアにも溢れている。

当連載では、サステナブルな暮らしの応援メディア「Life Hugger」で活動するエコライターの曽我美穂が、海外在住の方に、その土地ならではのゼロウェイストな試みをお聞きしている。今回は、ノルウェー在住の吉川美奈子さんに、現地の暮らしで見つけたゼロウェイストかつ豊かな暮らしのヒントを伺った。

※ 本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Life Hugger」からの転載記事となります。
※ 以下、吉川美奈子さんの言葉

ノルウェーの「サワー・ドウ」文化

サワードウのパン
ノルウェーでは、サワードウを使ったパンを日常的に焼く人が多いです。サワードウは「ライ麦粉や小麦粉に水を混ぜる」というプロセスを繰り返して完成させる、天然酵母の一種。サワードウを使って作る自家製パンは添加物ゼロ。栄養価が高く、何よりもちもち感がたまらなくおいしいです。私もここに住み始めてから、よく焼くようになりました。

サワー・ドウという名前は酵母自体に酸味があることから来ているそうですが、新しい酵母で焼けば、パン自体に酸味が残ることは全くないです。自分の酵母に名前をつけて、かわいがる人もいるとか。2週間以上旅に出たり、別荘や実家に滞在する時はサワードウの酵母を持参して育て、ついでにパンを焼く人もいます。

誰でも持っている「自然を享受する権利」

ベリー

北欧では「誰でも自然を楽しむことができる」という権利を保障する自然享受権が保障されています。この自然享受権には、土地の所有者の許可を取らなくても誰でも自由に森に入ることができる権利や、自生しているベリー類やキノコを採取できる権利が含まれています。

そこで、ノルウェー人は自然享受権を最大限に活用し、地元の大自然で育った新鮮な木の実を無料で採り、自宅の食卓で食べています。ノルウェー国内の森は木の実の宝庫。ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、様々な種類のスグリが採れます。さらに、私が住む北ノルウェーなら、北極圏ならではのクラウドベリー(ホロムイイチゴ)も採れますよ。

ベリー

食品ロス問題対策

賞味期限
実はノルウェーでは一人当たりの食品廃棄量が多く、社会問題となっています。そこで、スーパーなどで売っている牛乳などの乳製品には賞味期限の表示がありますが、日付の下に”Ofte God Etter (期日後も飲めることが多い)”という記載があります。また、息子が通う小学校ではバナナの保存方法を学ぶ課外授業が開催されるなど、食品ロス対策を授業の一環として教えています。

パン

最近活用している、食品ロスを防ぐアプリ「TOO GOOD TO GO」も便利で、人気です。このアプリを使えば、レストラン、スーパー、コンビニ、ベーカリー、カフェなどで売り切れなかった食品を、格安で手に入れることができます。現在住んでいるトロムソで見つけた超お買い得人気商品は、上の写真のパンです!2021年の「グルテンフリー賞」を受賞したSpiserietというカフェでゲットしました。

アプリには「105クローネ相当の商品が35クローネ」と表示されていましたが、低炭水化物のパン、アボカドと枝豆、生ハムが乗ったオープンサンド、鶏胸肉のサラダロール、クロワッサンのサンドイッチなど盛りだくさんの内容で、ウェブサイトで確認すると合計200クローネ以上の品が入っていました。家族3人分の翌日の朝食、昼食はこれでカバーできました。

バス料金や駐車料金、電気代の支払いなどがペーパーレスで可能

ノルウェーでは、アプリを使った電子マネーの支払いがとても盛んです。特によく使われているのがVipps。割り勘するときなどの個人同士の金銭のやり取りのみならず、お店での支払い、特定団体への寄付、会費など、いろんな場面で使われています。祖父母からのお誕生日プレゼントを「Vippsしてね」とお願いする小学生もいるのだとか。

市内の駐車料金の支払いは、Easyparkというアプリがよく使われています。事前に自分の車のナンバーと支払い方法を登録しておき、駐車開始と同時にアプリを起動して場所を特定。駐車時間を指定してスタートボタンを押すと自動的に支払いが開始されます。未支払いが発覚した場合は、日本円で1万円弱(2022年11月のレート)の罰金を支払うことになります。他にも同様の駐車料金支払いシステムが国内にいくつかあります。

なお、交通機関の支払いはTroms Billettというアプリを使っていて、現金で支払う時は倍近く払わされます。銀行や郵便局等からの個人情報が含まれる郵便物をアプリを通してデジタルで受け取れるシステムや、郵便局の支払いで使えるアプリ、学生証、運転免許証等の身分証明書の役割を果たすアプリもあります。

SNSやウェブサイトを通じた不用品のやりとりが盛ん

こちらでは、地元のフェイスブックのグループやfinn.noというウェブサイトを通じた不用品のやりとりが盛んです。信用社会なので、その人の電話番号、住所も載っています。

売っているものはかなり幅広く、車、仕事、家、近くの森で集めたベリーやキノコなどいろんなものが見つかります。小さい物は、Fiks ferdigというシステムを使うと、ワンクリックでVippsアプリでの支払いとHelthjemという個人宅から個人宅までの回収配達サービスを受けられるのでとても便利です。

ウェブサイトのスクリーンショット

電気自動車の多さ

電気自動車の充電
ノルウェーは石油産油国の為、必然的にCO2排出量が出てしまうものの、サステイナブルな国のあり方を探り続けており、政策では世界をリードしています。特に政府の助成金や通行料金政策等を通したゼロエミッション車への転換のスピードはすさまじく、2022年夏の時点で国内で使用されている車の18%が電気自動車です。2030年までに、国内で販売される新車は全てゼロエミッション(電気または水素)になる予定です。街中でも電気自動車を目にすることが多く、ショッピングセンターの近くにある充電ステーションはいつも混んでいます。

薪ストーブ、DIYが一般的

木を切る許可が出ている土地を持っている人は、木を切り、それを薪用に斧で割って使っています。一年ほど乾かすと使いやすい薪になりますよ。また、家の組み立てやら修理は、自力でする人もかなり多いです。
木を切る人

日常生活の中でいろんなゼロウェイストにつながる工夫を見つけられるノルウェーの北極圏の町で、これからも楽しく毎日を過ごしていきたいです。

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