思わずリサイクルしたくなる、世界のナッジ事例5選

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市民がなかなかリサイクルしてくれない──そんな悩みから、ドイツやノルウェーなどのヨーロッパ各国ではペットボトルと空き缶で少額のお小遣いがもらえるような制度が導入されている。

スコットランドでは2023年8月、イギリスは2025年より、リサイクルを推進するため、このデポジット・リターン制(Deposit Return Scheme)を導入する。

各所に「逆自動販売機reverse vending machine」とよばれる機器を設置し、そこに人々がペットボトルや空き缶を返却すると、少額の現金が戻ってくるというのだ。英国政府は制度発足から3年以内に全飲料容器の85パーセントを回収することを目指している。

シンプルで効果的なリサイクル促進法。スコットランドで飲料ボトルにデポジット導入

あなたは普段、リサイクルに協力しているだろうか?

世界ではプラスチックだけでも、年間約4億トン生産されているといわれる。そのうち、リサイクルされるのは、たったの9パーセントだ。排出されたプラスチックの多くは処分・焼却されたりするが、年間467万~1,275万トンは不適切に処理され、海洋へ流出し、環境汚染につながっている(※)

そんななか日本では、2022年4月にプラスチック新法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が施行され、よりいっそうプラスチックの使用量削減・再利用・リサイクルの3Rに、再生素材や再生可能資源(紙・バイオマスプラスチック等)への切り替えを加えた3R+Renewableに努めるよう目標が設定された。

リサイクルというと、「面倒くさい」「しなくてはならない」とついネガティブに捉えられがちだ。しかし、このように世界では、循環型社会に向けて人々を後押しするアイデアで溢れている。今回は、そんな人々のリサイクルを促すクリエイティブなアイデアを5つ紹介する。

思わずリサイクルしたくなる、クリエイティブなアイデア5選

01. バスに乗るのにお金はいらない。インドネシア発、「ペットボトル払い」

「はい、ペットボトルと乗車券を交換ね」インドネシアで始まった、エコな試み

インドネシア第2の都市スラバヤで、2018年からペットボトル5本につき2時間のバス乗車券と交換できる制度が始まっている。1日250キログラム、月7.5トンものペットボトルを回収しているという。環境にもボトル回収業者にもプラスな一石二鳥アイデアだ。

  • 国名:インドネシア
  • 団体(企業)名:スラバヤ運輸局
02. UAE発、資源ごみで「ポイ活」できるアプリ

UAE、ペットボトルの無料回収&ポイント付与でリサイクル率向上へ


2020年からアラブ首長国連邦(UAE)では、ペットボトルなど資源ごみの無料回収アプリ「RECAPP」が実装されている。ユーザーは、ごみ袋を自宅玄関前に置いて、回収を申し込むだけ。回収のたびにポイントを貯められ、ギフトに交換することも可能だ。今のところRECAPPで回収してもらえる資源は、PETボトル、HDPE(高密度ポリエチレン)ボトル、金属缶。将来的にはガラスや段ボールなど、他の資源を回収することも視野に入れている。

03. サントリー、剥がしたくなる「ラベルおみくじ」導入

飲料会社のサントリーは、ペットボトルに貼られたラベルの裏におみくじがあるデザインを採用。おみくじを集めて応募すると、抽選でプレゼントが当たるというものだ。ペットボトルからラベルをはがす「分別」という面倒なひと手間を、ワクワクの運試しに変えるアイデアのキャンペーンだ。

04. スペイン発、豪華賞品を狙えるリサイクルアプリ「RECICLOS」
RECICLOS

Image via RECICLOS

リサイクルするとポイントを獲得できるアプリは各国で開発されているが、RECICLOSはよりゲーム感覚で取り組める。ユーザーは、ペットボトルや空き缶をスマホでスキャンし、コンテナに投入する。コンテナのQRコードをスキャンすると、ポイントがゲットできる。そのポイントに応じて好きな賞品が抽選で当たるというものだ。獲得ポイントは、環境活動をするNPOなどに寄付することもできる。

  • 国名:スペイン
  • 団体(企業)名:RECICLOS
05. 「感謝」がうれしい。分別を加速するごみ収集所

2015年に南三陸町に誕生した、バイオガス施設。ごみ集積場に置かれている生ごみ専用バケツで家庭の生ごみを収集し、バイオガス施設でメタン発酵することで電気や液肥を取り出し、それを地域に還元をすることで資源を循環させている。

導入から3年が経ってもなかなか思った以上に生ごみ回収が進まなかったなか、行動経済学・心理学を活用した解決策としてごみ収集所に「感謝状」を掲示。なんと生ごみへの異物混入が減ったり、回収に協力する量が増えたりしたという。よりよい行動の後押しは、金銭に限らないようだ。環境省のベストナッジ賞を受賞している。

  • 国名:日本
  • 団体(企業)名:NECソリューションイノベータ、南三陸町

クリエイティブなコミュニケーションで人々の行動を変える

いかがだっただろうか。世界には、あの手この手でリサイクルを促進しようとするクリエイティブなアイデアが満載だ。

回収を依頼できるのは便利だし、ポイントを貯める「リサイクルポイ活」をする人も増えそうだ。また、そうしたポイントや現金ではなくても、「感謝」というコミュニケーションのあり方によって、人々の行動が変わることも示されている。

アプリ開発など、リサイクル社会の到来は大きなビジネスチャンスでもある。今後もこうしたクリエイティブなアイデアに注目していく。

環境省(2021)「プラスチックを取り巻く国内外の状況 <参考資料集>」
【参照サイト】環境省 プラスチック資源循環 
【参照サイト】Press release Deposit Return Scheme for drinks containers moves a step closer
【参照サイト】伊右衛門で縁起もん当たるキャンペーン
【参照サイト】NECソリューションイノベータ公式ホームページ 生ごみ資源循環の促進@南三陸
【参照サイト】Scotland’s deposit return scheme

Edited by Erika Tomiyama

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