人や地球とつながり直せる暮らし方。オーストラリアの「コハウジング」を覗いてみよう

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「コハウジング(Co-Housing)」という暮らし方をご存知だろうか?一見、普通の集合住宅やアパートと変わらないようだが、その住宅のつくりと、そこに住む住人の暮らし方に特徴がある。

住人はそれぞれ独立したプライベートの居住空間を持ちつつ、敷地内には共有キッチンや共有リビングルーム、屋上菜園などがあり、住人同士が顔を合わせ、交流できるスペースがデザインされている。

一人暮らしの若者、子育て中の家族、高齢者といった、多世代が交流でき、支え合う仕組みをもつ集合住宅だ。

Image via Nightingale Housing

例えば、子育て世代は高齢者が同居することで、人生の大先輩からアドバイスをもらえる。高齢者は若い世代と同居することで、体調が悪いときや手伝いが必要なときに気軽に声をかけられる。お互いの顔が見え、お互いを大切にする。昔の自治会や町内会といった地域コミュニティを彷彿させるような暮らしだ。

オーストラリア・メルボルンで広がるコハウジングプロジェクト、Nightingale Housing(ナイチンゲール・ハウジング)は、中心部から電車で10〜20分ほどの郊外に位置する集合住宅。現在国内に15棟もの住宅が完成している。共用スペースにはランドリーや物干し場、屋上菜園などがあり、一階部分にはカフェやオーガニックワインショップ、ヨガスタジオなどの店舗が立ち並ぶ。

屋上へ洗濯物を干しに行けば、美しい街並みや木々が目に入り、住民の誰かと言葉を交わす。そんな日常の人とのつながりから、問題が起これば互いに話し合い、解決しようとするコミュニティが生まれている。

Image via Nightingale Housing

ナイチンゲール・ハウジングの手がける住宅のコンセプトは「Build Less, Give More(少なく作り、多く与える)」。建物に使う資材は極力減らし、最低限の機能を備えた造りになっている。

例えば、住宅に地下駐車場やガレージはなく、その代わりに駐輪場が十分に用意されている。電力は自然エネルギーを利用したオール電化で、屋上にはソーラーパネルを設置。オーストラリアでは珍しくない複数のバスルームは1戸につきひとつに集約され、水回りの金具は真鍮製で、クロムメッキのものは使われていない。

二重ガラスや断熱材など気密性の高い建物構造と換気システム、サンシェードや壁面緑化などによって、エアコンの使用を抑えられる。

さらにナイチンゲール・ハウジングは「利益を求めない」非営利団体として運営しているという特徴がある。

オーストラリアは過去20年の間、税制変更によって富裕層がより多くの不動産を購入するようになった。特に低所得者層や初めて住宅を購入する若者にとって、都市部で住居を手に入れるのはとても難しい状況にある。すべての人が持ち家にアクセスできるように。そんな思いから、ナイチンゲール・ハウジングは住宅を原価で販売している。

住宅の20%は、地域のエッセンシャルワーカーや、アボリジナルの人々などの先住民に優先的な購入権が与えられている。さらに別の20%はオーストラリアの住宅供給会社に配分され、社会的に弱い立場にある人々への賃貸物件として提供されている。

Image via architectureau

人と関わらなくても多くのことを解決できる時代に、あえて人とのつながりを求める生活は「お互いさま」の心を取り戻し、人々の暮らしに安心感と豊かさをもたらすかもしれない。また、気候変動やコミュニティの崩壊、不平等な社会に対して真に向き合い、“より良い住まいをつくる”という彼らの思いは、個人からコミュニティへ、コミュニティから地域社会へ、さらに地域社会から企業や行政へ、より大きなスケールとなり自然と広がりを見せていくだろう。

【参照サイト】Nightingale Housing
【参照サイト】Nightingale Village
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Edited by Megumi

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