経済支援だけじゃない。地域とのつながりを生むコミュニティ型ベーシックインカム

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「すべての人に無条件で、最低限の生活を営むのに必要な現金を支給する社会保障制度」であるベーシックインカム。生活保護とは異なり、収入や資産に関係なく誰にでも支給されることが特徴だ。

オランダでは2016年から複数都市で導入実験が行われており、政府が保障するものだけでなく、民間団体が支給するものまで存在する。

そのなかでも今回注目したいのは、現在3,000人にベーシックインカムを支給し、「公平で包括的な社会」を提案するオランダのイニシアチブ「Collectief Kapitaal(コレクティブキャピタル)」だ。2020年のコロナ禍に始まったこの活動では、プログラム参加者から資金を集め、信託に基づいて経済的に不安定な状態にある人々に対し12か月、毎月1,000ドル(約14万円)を再分配している。

特徴的なのは、単に経済的な支援をするだけでは終わらないことだ。コレクティブキャピタルに参加する人々はまず、「プログラムに共に参加する支援仲間たち(コミュニティ)と何を共有したいか」を決めることから始まる。通常通り「お金」の支援をする人もいれば、「コーヒーを飲みながら話をする時間」や、「経済に不安を抱える人へのお金の知識」、「忙しい家庭の家事手伝い」など、お金以外の“自分ができること”をシェアする。これにより、受給者が社会とのつながりを感じることができるようになるのだ。

同イニシアチブでは、経済の不確実性や貧困問題は個人の問題だけではなく、社会の共同体全体の責任として捉えている。お金の支援による経済的な余裕だけでなく、頼れる人やコミュニティが存在することは、心の余裕にもつながるだろう。

コレクティブキャピタルは現在、オランダ国内のアムステルダム、ロッテルダム、レーワルデン、アーネムで活動している。2023年には都市数の拡大はせず、まずは時間をかけてこれらの都市での支援を「適切に」配置し、そのために何が必要かを学んでいくとしている。

オランダ同様にベーシックインカムの導入実験をしたフィンランドでは、ベーシックインカム受給者にストレス状態や健康状態の調査を行ったところ、幸福度が上がったという結果も出ている。その一方でベーシックインカムの導入について、財源の確保が困難、既存の社会保障制度を強化すべきではないかなどの、マイナスな意見が存在するのも事実だ。

誰もが安心して暮らすには、どのような社会を目指せばいいのか。引き続き考えていきたい。

【関連記事】「フィンランドがベーシックインカムの調査結果を発表。雇用状況は変わらずも、幸福度に変化」 
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【参照サイト】Collectief Kapitaal公式サイト
【参照サイト】collectief-kapitaal-nl

Edited by Erika Tomiyama

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