食料か暖房か。寒波の英国を救う「ウォームバンク」

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「食料」か「暖房」か。

こんなフレーズがイギリスのメディアで頻繁にとりあげられている。インフレが進み、光熱費が高騰するイギリスでは、この冬「食料」か「暖房」のどちらかの選択を迫られる人が出てくるというのだ。

イギリスで、家の暖房不足が原因で亡くなる人は毎年1万人を超え、その数はアルコール中毒や交通事故による死亡者よりも多い。今年、光熱費が家計を圧迫して貧困に陥る家庭は約7百万世帯と試算されており、状況はきわめて深刻だ(※)

そんな中、安全で暖かい場所を市民に提供する「ウォームバンク」の取り組みが全国で拡大している。フードバンクにならったこの取り組みは、主に教会や慈善団体などがボランティアで運営。Warm welcomeWarm Spacesなど、全国のウォームバンクを検索できるホームページも登場し、探したい地域を入力すると、そのエリアのウォームバンクを見つけることができる。施設詳細情報には、インターネットや充電の有無、車椅子でアクセス可能か、子ども向けか、食事や飲み物の提供があるかなど、分かりやすく表示されている。

ウォームバンク検索サイトWarm Welcome

ウォームバンク検索サイトWarm welcome

試しに、ロンドンで検索してみると、図書館や、教会などの他にも意外な場所がみつかった。ロイヤルオペラハウスは、日曜日以外は毎日22時まで利用可能とのこと。無料のWi-Fiや仕事用デスクもあり、在宅で仕事をしている人や学生などにとってはありがたいだろう。

劇場のLyric Hammersmith Theatreは、日曜日以外は毎日18時まで利用可能で、食事やドリンクが必要な人は、レストランで合言葉を言うとサービスを受けることができる。博物館のHorniman Museum and Gardensも、予約なしで誰でも歓迎で、家族連れの利用も多いとのこと。

Warm Welcomeに掲載されたロイヤルオペラハウスの詳細

Warm Welcomeに掲載されたロイヤルオペラハウスの詳細

他にも、検索サイトの各施設詳細には「温かい飲み物とおしゃべりを楽しみに来てください」、「ボードゲームあります」、「木曜の夕方は子ども向けイベントをしています」、「必要な人には無料の衣料や寝具を提供しています」、「ペイフォワード(恩送り)システムで飲食の提供をしています」など、愛情あふれるメッセージが添えられているところもあり、見ているだけで心が温まる。

ウォームバンク検索サイトのWarm Welcomeには、現在3643の施設が登録されているが(2022年12月20日現在)その数は寒さが厳しくなるにつれ増えている。全国的な危機に面し、支援する人と支援を受ける人のハードルも低くなっているように思う。本当に必要な人の元にこの情報が届き、冬を無事に乗り切れることを願ってやまない。

COST-OF-LIVING CRISIS THE FACTS
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【参照サイト】ウォームバンク検索サイトWarm Spaces
【参照サイト】ロイヤルオペラハウス
【参照サイト】劇場Lyric Hammersmith Theatre
【参照サイト】Horniman Museum and Gardens

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