CO2を回収してファッションに。次世代の繊維スタートアップ「Rubi」

Browse By

ファッション業界が環境に与える負荷が大きいことは、近年認識されてきている。ファッションとひとくくりにいっても、その背景にはコットンなどの天然繊維の栽培時の水消費、化学肥料による土壌汚染、輸送にかかるエネルギー、ライフサイクルの短さなど、さまざまな課題がある。とりわけ、“服の原料”となる繊維の製造過程での環境負荷は大きく、そのカーボンフットプリントも無視できないものだ。

環境に配慮しつつファッションを楽しみたいという消費者が増えているが、ファッション業界に革命がおこるかもしれない。アメリカ・カリフォルニアにあるスタートアップ「Rubi(ルビ)」は、CO2を回収し、カーボンネガティブなセルロース繊維をつくる技術を発表した。

系

Image via Rubi

一体どんな技術なのだろうか。まず、製造工場などから排出されるCO2を集め、次に集めたCO2を酵素を用いた生化学的プロセスを通じて、セルロースに変換する。最後に、変換されたセルロースを用いてリヨセル糸を作り出す。リヨセルは、セルロースを原料とする人工繊維の一種で、衣料品や他の材料の製造に使用される。

Rubiの技術は樹木と同じ仕組みだ。タンパク質の一種である酵素を使い、樹木がCO2を幹や葉のセルロースと呼ばれる炭素ポリマーに変換するように、繊維のもととなる糸を紡ぐセルロースポリマーをつくり出している。この糸からは、リヨセル、ビスコース、レーヨンなど、通常は木や竹を原料とする織物をつくることが可能だ。

通常のリヨセルの生産過程では、生地1キロあたり5〜10キロのカーボンフットプリントが発生する。一方で、Rubiの技術を使えば、森林伐採や炭素、水、土地を大量に消費する製造方法に頼らずに、高品質なリヨセルを製造することが可能だ。さらには、最終的には炭素を閉じ込めるため、製造や輸送に使われるエネルギーなどを考慮しても、CO2排出量をゼロにする以上の効果がある。また、セルロースが生分解性の天然素材である点にも注目したい。

ファッション業界では、炭素を活用して繊維をつくる取り組みが増えているが、複雑な製造過程や製造にまつわるコストの高さなど課題を多く抱えている。しかしRubiは、自社の技術はより手頃な価格でエネルギーを節約できると主張している。

Rubiの本社には、実験室規模の糸の製造システムがある。現在は工場の排出ガスを模倣するためにCO2を混合した容器を使って糸を製造しているが、近い将来には繊維生産工場と協力し、その場で排出ガスを回収・変換する技術を確立する予定だ。同社が規模を拡大すれば、既存の工場で直接糸がつくられるようになる。

Rubiの創設者兼CEOのMashouf氏によれば、糸の初回生産サンプルは高品質のリヨセルと同じような性能を示したという。同社はコペンハーゲンを拠点とするラグジュアリー・ファッションブランド「Ganni(ガニー)」と提携し、この新しい糸のサンプルを発表した。生地と衣服の試作はこれからだが、Rubiが開発したCO2由来の糸と、従来のセルロースをブレンドした生地を使用し、Ganniブランドの服を製造予定だ。

環境負荷を考慮すると、ネガティブな面も目立っていたファッション業界。このような技術革新によって、本来ファッションがもたらす「服を着て、表現することの喜び」を取り戻すことができるかもしれない。

【参照サイト】Rubi公式サイト

Edited by Erika Tomiyama

Climate Creative バナー
FacebookTwitter