ふと気がついたら、SNSアプリをスクロールし続け、数十分が経過していた──知らないうちに時間だけがどんどん過ぎてしまったことに、罪悪感や後悔の念を抱いたことがある人も多いのではないだろうか。ドイツの統計市場調査プラットフォーム・Statistaが2021年に発表した研究では、ユーザーは週に平均16時間をSNSに費やしており、SNS依存によりメンタルヘルスへの悪影響が増大すると指摘されている(※)。
この現状を問題視したのが、ドイツのクリエイターであるフレデリック・リーデル氏だ。同氏は、SNS利用を物理的にブロックするのではなく、スクロールし続ける「習慣」そのものを変えてスマホ依存の脱却を目指すアプリ「one sec」を開発した。
「one sec」を設定しておくと、事前に指定したFacebook、Instagram、Twitterなどのアプリを開こうとした際に、10秒間の深呼吸を促す画面が表示される。10秒経つと、画面にそのアプリを過去24時間以内に開いた回数や、最後に開いた時間が表示され、ユーザーはその情報を見たうえで、アプリの利用に「進む」か「進まない」か自身で選択する仕組みになっている。
また、有料版では、アプリの利用に「進む」「進まない」だけでなく、代替の選択肢を提案する機能が追加されている。代替の選択肢には、例えば「スポーツをする」「家族の写真を見る」「趣味をする」「友達に電話する」「水を飲む」「読書をする」などのものがある。自分の健康や幸せにつながる選択肢をあらかじめ設定しておくことで、SNSを開こうとする瞬間を、より良い習慣を定着させるきっかけにすることもできるだろう。
「one sec」 創設者らがまとめたレポートによると、このアプリは、わずか2年間で、100万人のユーザーのスクリーン時間を57%削減することに成功しているという。実際に使用したユーザーからも「アプリを使用し始めてから、1日の時間がより長く感じられ気分も大幅に改善された」「無意識にSNSを利用してしまうパターンから抜け出すのに非常に役立った」など高い評価を得ている。
物理的にアプリ使用をブロックするのではなく、実際に使用するかしないかの選択をユーザー自身に委ねる「one sec」。
私たちが「無意識のうちにスマホやSNSに使われている」状態から「意識的にスマホやSNSを上手に活用できる」状態へ転換し、より心身豊かな生活を送る手助けとなってくれるのではないだろうか。
【参照サイト】one sec
【参照サイト】one sec | delay apps & focus(Mac App Store Preview)
【参照サイト】How social media is helping make the switch to sustainability (Uniliver)
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