禁煙エリアの喫煙者を「見つめよう」。香港の提案から考える、ルールの守り方

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「ルールの守り方、守らせ方」は、国や文化、それぞれのコミュニティによって異なる──コロナ禍のマスク着用問題は、そんな当たり前のことを考えさせたのではないだろうか。

日本では、マスク着用は政府の「お願い」であり「自粛」にゆだねられていた。だから、特にマスクをしない人に対する罰則はなかった。今もマスクの着用は主に、個人の判断にゆだねられている。

これに対して、コロナ禍の欧米では、マスク着用や店舗の閉鎖(ロックダウン)を義務化し「罰則」で取り締まっていた。マスク一つするにも、文化によっては法律や罰則などの強制力を必要とする場合もあるのだ。

そんななか、いま香港では、なんと人々の「まなざし(視線)」によって、ルールを守らせようというアイデアが真剣に議論されている。

香港の保健長官は、禁煙エリアでタバコに火をつけようとする人を、周囲の皆で「じっと見て」、喫煙を止めさせよう、という驚きの提案をしているのだ。

香港

Image via shutterstock

香港では、全国的に喫煙の有害性に対する啓発と対策が強化されてきた。全ての人々のヘルスケアのために、レストランや職場、屋内の公共スペース、屋外の一部の公共スペースでの喫煙は禁止されている。この法律に違反すると、最高で1,500香港ドル(日本円で約27,000円)の罰金が科されるのだ。

禁煙問題の議論に取り組んでいるロー・チェンマウ博士は、「(今回の対策によって)“バスの行列に並ぶマナー”のように、法律がなくとも、禁煙という一つの文化を香港社会につくり上げることができる」BBCのインタビューで語っている。

こうした「見つめる」ことで文化をつくろうという提案を、あなたなら、どう感じるだろうか。

ルールを守らせるためには必要だし、コストもかからないからよいのではないか。警察の代わりを市民が担っているようでちょっと怖い。いやいや、「自粛」が有効な日本には合っているのではないか──。

フランスの哲学者であるミシェル・フーコーが唱えた「権力論」を持ち出すまでもなく、人間の「まなざし」、「視線」は何らかの行動を強制させる力を持ちうる。ルールは守りさえすればよいのではない。そもそもそのルールがどういう方向性を持ち、何を目的にしているのかを「見つめる」ことも市民には必要になってくるだろう。

気候変動対策を始めとして、様々な「ルール」は、いま私たちの身の回りに増えている。そんなルールの守り方・守らせ方を問い直し、どんな文化を構築するのかを考えさせてくれる、香港のちょっと奇抜なアイデアだ。

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【参照サイト】Stare at smokers to stop them, Hong Kong health chief urges public
【参考文献】ミシェル・フーコー(1977)『監獄の誕生』新潮社

Edited by Erika Tomiyama

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