11/19は世界トイレの日。34億人に安全を届けるトイレットペーパー革命「Who Gives A Crap」

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11月19日は、世界トイレデー。これは、世界中でトイレのない場所で暮らす人々がいることや屋外排泄をしなければならない人々がいること、それによる衛生問題が発生していることなど、トイレにまつわる問題を世界のみんなで考え、少しでも改善していくために国連が定めたものだ。

トイレの問題について語るときよく登場するのが、「WASH」という言葉だ。「WASH」と言われて多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、英語の「洗う」という単語だろう。

しかしこの言葉、衛生状態の改善を表す略語の「WASH」でもあるのだ。これは「WAter(水)」、「Sanitation(衛生設備)」、 「Hygiene(衛生促進)」の頭文字を取ったもので、安全な水やトイレ・衛生設備へのアクセスを改善することを指す(※1)

今回テーマとなるトイレの問題は、この「WASH」のうち「S」にあたる。

私たちは普段当たり前のようにトイレを使用しているが、世界では34億人が安全に管理されたトイレを使用できていない。このうち、4億1,900万人は、家や近所に利用できるトイレがなく、道端や草むらなどの屋外で用を足しているという(※2)。排泄物がたどり着く地元の水路は、人々が飲み水にしたり入浴のために使ったりするための水場でもある。こうして、人々の貴重な水源の質が低下していってしまうのだ。

実際、劣悪な水と衛生環境によって引き起こされる下痢性疾患で、毎年52万5,000人の5歳未満の子どもたちが命を落としているという(※2)

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こうした状況のなか立ち上がったのが、オーストラリアの起業家サイモン、ジャン、ダニーの3人だ。彼らは、2012年7月、IndieGoGoでのクラウドファンディング・キャンペーンで、「トイレをつくるためのトイレットペーパー」を販売する「Who Gives A Crap」を立ち上げた。

Who Gives A Crap

「Who Gives A Crap」では、再生紙や竹でつくられたトイレットペーパーを販売。そしてその利益の50%を清潔な水とトイレへのアクセスを提供する団体へ寄付し、エチオピアやインド、ケニアといった地域でのWASHに取り組んでいる。「適切なトイレのためのインフラ構築は、地理、気候、文化、歴史によって異なる」との考え方から、地域密着型のアプローチを採用する様々な組織と提携しているそうだ。

また、衛生問題と環境問題の両方にアプローチしたかったという「Who Gives A Crap」は、トイレットペーパー自体をリサイクル繊維や代替繊維からつくることはもちろん、使い捨てプラスチックを使わないパッケージを使ったり、CO2排出量の計算と相殺を行うことでカーボンニュートラルな配送をしたりといった工夫も行っている。

気になる価格だが、再生紙トイレットペーパーで1ロールあたり約1.6オーストラリアドル(約153円)、竹製ペーパーで1.7オーストラリアドル(約164円)ほど。一見すると同じロール数が入っている他社のトイレットペーパーより高価に見えることは確かである。しかし、ロールの長さを2倍にして製造しているため、実質的にはスーパーマーケットで販売されているものとほぼ同等の価格であるとのことだ。

日常のなかで欠かせないトイレタイムを、遠く離れた場所で暮らす誰かの生活改善に直結させる「Who Gives A Crap」の取り組み。「トイレットペーパーで世界を変える」というと大げさに聞こえるかもしれないが、彼らは本気だ。生活必需品の選び方を変えるだけでその試みをサポートできるチャンス──私たちもその手に見知らぬ誰かの未来を明るくするための鍵を握っているのかもしれない。

※1 WASHって何だと思いますか?(日本赤十字社 和歌山医療センター)
※2 衛生的な環境 (トイレ)(ユニセフ)

【参照サイト】Who Gives A Crap

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