もし「くまのプーさん」が破壊された森に住んでいたら?環境問題を啓発する新たな物語

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子どもの頃に読んでいた絵本には、どんな世界が広がっていただろうか。

お菓子でできた国や、魔法が使える世界、木や花と会話できる世界など、まるで夢のような世界を想像するかもしれない。「もしこれが現実だったら良いのに」と一度は考えたことがある人も多いだろう。

しかし、今回紹介する絵本のなかでは、そんな心躍る想像とは真逆のことが起きている。しかもそれは、現実に起きていることだという。

プーさんが木に登っている様子(左側)と、プーさんが伐採された木を見ている様子(右側)

Image via Who Gives A Crap

物語の舞台は「くまのプーさん」の世界だ。プーさんは“100エーカーの森”に住んでいる、とディズニー公式サイトで紹介されている。しかし、今回紹介する絵本では森の木々がすべて伐採されてしまっているのだ。地図を見てみると、プーさんの家も、ピグレットの家も、100エーカーの森もなくなり、切り株だけが残っている。

絵本の名前は「Winnie-the-Pooh: The Deforested Edition(くまのプーさん:森林伐採版)」。物語の内容はオリジナルのままだが、絵本のなかで登場する挿絵や地図上からすべての木がなくなっている。これは100%リサイクルの紙や、竹からできたトイレットペーパーを販売する、オーストラリアで設立された企業、Who Gives A Crapが企画したものだ。

現在、トイレットペーパーを作るために伐採されている木は、1日あたり100万本にのぼるという。この現状に対し同社は「何百年も根を張ってきた世界中の木々がトイレに流されてしまう」として、課題への認識を高めようと今回の企画を実施した。

この書籍の収益は、清潔な水と衛生環境を提供するための活動に寄附される。ちなみに、書籍は紙だから木を伐採しているじゃないかと思われるかもしれないが、古いノートなどからリサイクルされた紙を用いているとのことだ。この企画は注目を集め、書籍版はすでに完売しているが、PDFファイルをウェブサイトから無料でダウンロードすることができる。

アメリカの非営利組織Natural Resources Defense Councilが2023年9月に発行したレポートにて公開されたティッシュ製品のサステナビリティランキングでは、Who Gives A Crapが販売する100%リサイクル紙のトイレットペーパーは最高ランクA+に次ぐAと評価された。今後さらに環境負荷の軽減が進むことを期待したい。

日本でも、従来のものより環境負荷を抑えたトイレットペーパーを目にする機会が増えている。いま自宅や職場で使っているトイレットペーパーがどの国のどんな原料からできているのか、ぜひお手洗いへ行くときに確かめてみてほしい。

【参照サイト】Who Gives A Crap
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【追記:2024/1/24】記事公開当時、文中で「アメリカの企業」とご紹介しておりましたが、正しくは「オーストラリアで設立された企業」でした。訂正し、お詫び申し上げます。

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