生態系を支える「無脊椎動物」の人気投票。土の守護神・ミミズが優勝に輝く

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2024年4月、英国の大手メディア・ガーディアンは、読者参加型の「無脊椎動物人気投票」を実施した。普段注目されることの少ない無脊椎動物だけに焦点を当てたのだ。「無脊椎動物オブ・ザ・イヤー」に選ばれた動物は……?

ガーディアンは、2024年4月に2週にわたって、無脊椎動物の中からいくつかの動物を取り上げ、それらの生態を紹介する記事を掲載した。記事で紹介されたのは、アゲハ蝶やミノタウロスカブトムシなど10種類の動物たち。さらに読者から推薦されたミミズを加えた最終候補の中から、読者はお気に入りの動物にインターネット上で投票した。

動物の人気投票は決して珍しいものではない。動物園や水族館で目にしたことがある人もいるだろう。しかしなぜ無脊椎動物という一見地味で、目立たない動物だけを取り上げ、さらに人気投票まで実施したのか。そこには彼らの驚くべき生態と種の存続が大きく関係している。

地球上に生息する動物のうち、私たちヒトを含む背骨を持つ動物、つまり脊椎動物の存在は全体のおよそ4〜5%に過ぎない(※1)。つまり残りのほとんどの動物は無脊椎動物に分類される。昆虫などの節足動物、甲殻類、軟体動物がその例だ。

既知の分だけでも130万種存在するといわれる無脊椎動物は、環境に適応し、進化を遂げてきた(※2)。地球上に数え切れないほどの無脊椎動物が存在し、生物界で重要な役割を担っていること、彼らが生態系のバランスにどれほどの貢献をしているかを知ることで、私たちはいかに彼らによって“生かされている”かを再認識させられる。

イギリスの動物学者、植物学者のデヴィッド・アッテンボロー卿が、BBC制作番組・Life in the Undergrowsの中で「私たち脊椎動物が一夜にして消え去ったとしても、世界の残りの部分はうまくやっていくでしょう。しかし、もし無脊椎動物が消えてしまったら、世界の生態系は崩壊してしまうでしょう」と語ったほどだ。

さて、気になる人気投票の結果だが、投票数全体の38%という他の動物に圧倒的な得票差をつけて優勝したのは「ミミズ」だった。ミミズはなぜここまで人気なのだろうか、それは彼らの驚くべき生態によるものかもしれない。

ミミズ

土を耕し、豊かな土壌を育むミミズは「土の神様」とも呼ばれる|Image via Shutterstock

ミミズは落ち葉や堆肥、昆虫の死骸など自然界にあるものを食べて分解し、栄養豊富なフンとしてまた土に返している。ミミズと微生物の力を借りて生ごみを分解するミミズコンポストも存在する。また、ミミズが地中で動くことによって、土の中に空間ができ、耕運機のような役割も担っている。繁殖方法も独特で、1匹のミミズがオスとメスの両方の器官を持っているため、2匹のミミズがいればどちらも卵を産むことができる。

私たちの生活にもなじみのあるミミズは、生態系の悪化や、化学肥料の使い過ぎなどの影響で、減少傾向にある(※3)という。他の無脊椎動物も同様だ。もしこのまま無脊椎動物が絶滅してしまったら……。デヴィッド・アッテンボロー卿が語ったように一瞬で全てのバランスが崩壊してしまうかもしれない。

無脊椎動物は「気持ち悪い」「地味」とネガティブな印象を持たれがちであるが、生態系を支える重要な存在だ。ミミズは英語で「earth worm」とも呼ばれ、まさに「私たちが暮らす地球になくてはならない虫」。今回の人気投票は、縁の下の力持ちである彼らの活躍を再認識する機会になっただろう。

※1 小学館 Hugkum「無脊椎動物とは?具体的に言える?種類や特徴について詳しく解説【親子でプチ科学】」
※2 沖縄科学技術大学院大学「150年来解釈が分かれていた古代の無脊椎動物の進化の関係に最適解を出した最新の分子遺伝学」
※3 マザーアースニューズ日本版「ミミズはどこへ行った?」

【参照サイト】Earthworm crowned UK invertebrate of the year by Guardian readers
【参照サイト】Invertebrate of the year 2024: all hail Earth’s spineless heroes
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