英・シェフィールド市が「有害な広告」を規制。環境と市民のウェルビーイングを守る

Browse By

広告とはなんだろう。広辞苑には「広く世間に告げ知らせること。 特に、顧客を誘致するために、商品や興行物などについて、多くの人に知られるようにすること」と記載されている。つまり市民に情報を伝える、企業や組織とをつなぐ架け橋とも言える。

しかし、すべての広告が私たちに良い影響を与えるものとは限らない。残念ながら、一部の広告は不都合な事実を言葉巧みに隠し、広告主の利益を優先している。規制をしようにも、基準の線引きが難しいのもまた悪質な広告が蔓延している理由の一つだろう。

イギリスのイングランド中部の都市であるシェフィールド市は、議会所有の広告スペースで気候危機に加担する企業や市民の健康を害する商品の広告を禁止することを決めた。これはグリーンウォッシングに対抗し、市民のウェルビーイング向上を目指すためのキャンペーンで、屋外看板だけでなく、ソーシャルメディアやウェブサイトも規制の対象となっている。化石燃料で動く自動車や、航空会社、ジャンクフード、電子タバコ、ギャンブルなどのキャンペーン広告を禁止するこの取り組みは2024年4月から施行される。

通常、広告主は掲載のために広告料を支払う。今回の規制によって、シェフィールド市では1万4,000〜2万1,000ポンド(約2,600万〜4,000万円)の減収になることが見込まれている。議会は今年すでに1,740万ポンド(約33億円)の超過支出、つまり資金不足に直面していると発表したにもかかわらず、このような大胆な決断をした理由はなぜか。

それは、規制による減収と、気候変動関連による健康被害を比較してみると、後者のコストの方が高くなると見込んでいるためだ。さらに目先の収入ではなく、環境目標を達成するため、そして市民の健康を守るために「有害な」広告を禁止することはその金額以上に価値があることだと認識しているからではないだろうか。

シェフィールド市の財務委員会委員長であるザヒラ・ナズ氏は、同市の公式YouTubeで「広告が貧困地域や低所得の人々にとって悪影響を与えていることを認識しており、これは国において最も意欲的な政策の一つだ」と述べている。地方行政が率先して環境問題に取り組む姿勢を見せることは、企業や市民だけでなく国に影響を与えるだろう。

現在、気候変動を助長するような企業への規制が活発になっているが、環境や私たちにとって悪影響を及ぼす商品の広告はすぐにはなくなるわけではない。シェフィールド市の決断は、消費者がより良い判断をする手助けになっていくのではないだろうか。

【参照サイト】Polluting products and brands pulled from Sheffield City Council-owned billboards
【参照サイト】New Sheffield advertising policy puts people and planet at its heart
【参照サイト】Sheffield declares war on consumerism: Council bans adverts for ‘harmful’ campaigns including cars, airlines and junk food to meet green targets – despite facing a £17.4m funding shortfall
【関連記事】EU、根拠のない「エコ広告」規制を再強化。その背景とは
【関連記事】英国で「屋外広告のない街」を求める声。広告が心身にもたらす影響が明らかに

FacebookTwitter