「街とつながる学校」が中国・深センに誕生。週末は市民のための公共空間へ

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少子高齢化が進む日本。対照的に、これまで人口増加が続いてきたのが中国だ。2023年末には2年連続で人口減に転じたことが大きく報じられたものの、未だ世界的に見ても膨大な人口を抱えている。

同国内でも、特に都市部における人口は多い。南東部に位置する広東省・深セン市もその一つであり、1980年に経済特区に指定された大都市だ。同市の人口は、2022年時点で約1,766万人にのぼった。香港と隣接しており、国内では金融の中心地とされている。

そんな大きく発展を遂げてきた深セン市で課題となっているのが、人口過密による学校の不足だ。同市の人口密度は2022年時点で国内トップ(※)。人口の増加によりさまざまなインフラが必要となる中、十分な土地が確保できず、学校の数が足りていないという。

狭い土地でも多くの学生を受け入れられるキャンパスを建設できないか──そんなミッションをもとに、同市は3,000人が通う市内の福田中學(Futian High School)を建て替えるアイデアを公募した。

その中から選ばれたのが「高校を多層的な作りにして、街から隔離するのではなく市民にも開かれた空間にする」という提案だ。北京・深セン・シンガポールを拠点に活動する建築デザインスタジオ・reMIX studioによる提案であった。

学校を空から見た写真。黄緑と黄色をアクセントとした、学校と寮を含む建物の様子

学校を上空から見た様子|Photo by Zhang Chao, via reMIX

グランド下にあるバスケコート。サッカーグラウンド横にぽっかり空いた穴が下へ続く階段で、そこからの光が指す中で生徒がスポーツを楽しんでいる

グラウンド下にあるバスケットコート|Photo by Hu Kangyu, via reMIX

狭い土地でも多様な施設を確保するため、地面から7.4メートルも底上げした土地にトラックと校舎、そして学生寮を建設。その地下空間となる地上階に、食堂や屋内型の球技用コート、水泳プールに加えて、半屋外のバスケットボールやバドミントンのコートも設置された。本当の地下には駐車場が整備されている。

こうした地上階の運動用コートやジム、プール、そして講堂などは週末やイベント時に市民も利用することが可能。学校が公共にも開かれると、新たに公共施設を建てるニーズを減らすことにつながる。このような施設の多目的利用は、土地が不足するエリアにおいて非常に効率的だろう。

従来、セキュリティ上の理由から中国の学校施設は外部から隔離されてきたという。しかしこの多層的なつくりによって、生徒が学習で使用する場所と、部分的に地域コミュニティのアクセスが可能な空間を分けることに成功した。

学校の入り口を地上レベルから見た様子。大きなサッカースタジアムのように大きいかつ近代的。

学校のエントランス|Photo by Zhang Chao, via reMIX

どの鳥がどこで何を捕食するのか、このように計画が練られていた|Image via reMIX

さらに、この公募では「渡り鳥のためにサッカーピッチを芝生にすること」が求められていた。実は福田中學が、渡り鳥の飛来ルート上に位置しているのだ。そこでreMIX studioは、屋上を鳥の生態系を考慮してデザイン。学校の目の前にある公園と一体化して捉え、どこでどの鳥が何を捕食するかなどを考慮して屋上の緑化が行われた。

人口過密という課題に対処するこの学校は、学生、住民、渡り鳥までを建築デザインの関係者として取り入れた。教室内で勉学に勤しむだけの場所ではなく、地域コミュニティの一部として学校を捉えたとき、学生の学びも校舎を超えて広がっていくだろう。

中国の都市密度ランキングトップは深セン市 1平方キロで8000人以上

【参照サイト】link-ed(u): futian campus|reMIX studio
【参照サイト】FUTIAN High-School Campus / reMIX studio
【参照サイト】深セン概要 概要|深セン市政府ポータルサイト
【参照サイト】中国四大都市とは?中国語を勉強するにはどこが良いか? | 深圳大学東京校
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